五番隊隊長平子真子。 彼は朝から機嫌が悪い。 その原因は明らか。 「藍染副隊長、この書類の確認して頂けませんか?」 「あぁ、いいよ」 名前が藍染にべったりしているからだった。 とは言え、平子と名前は恋人同士ではない。 平子の気持ちは伝えられ知っていたが、彼が嫉妬しようが何をしようが、名前は「知った事か」とばかりに、藍染に限らず男性と親しくする。 その名前の行動が平子は面白くない。 「平子隊長」 「なんや」 「そんな顔していないで、ちゃんと手を動かしたらどうですか」 気付けば名前ばかりに気を取られ、自身の仕事が全く進められていなかった。 「せやかて、仕事になら」 「ちゃんとして下さい」 「…ハイ」 (しゃーないやろ、名前が気になるんやから。それくらい言わせてくれたってええのに) 仕方なしに平子は書類に判を押しはじめた。 時々、名前が藍染と小声で話している内容に聞き耳を立てながら。 明くる日 この日は隊首会が開かれていた。 隊舎には藍染と名前が残っている。他の隊員は、各々の仕事をする為席を外していた。 もちろん平子は気が気ではない。 隊首会が終わり、急いで隊舎へと戻る。隊舎内から途切れ途切れに聞こえる名前と藍染の会話。その姿は見えず…。 「いいのかい?きっと平子隊長が怒るよ」 「…いいんです。 別に恋人って訳ではないですし」 「それもそうだね。 では、平子隊長が戻る前に…」 「…藍染副隊長って、やっぱりお上手なんですね」 「そうかい?」 「次は…私がします」 (なっ!怒るに決まっとるやないか!そら恋人やあらへんけど…てかお前ら何をしてんねん!何が上手なん!?ああああかん!!) 「お前ら隊舎で何してんねん!」 意を決して飛び込む平子。 その瞳に映ったのは、名前に膝枕をされていた藍染の姿。 平子は自分が想像していたのと違った事に安心したが、また別の怒りが込み上がってきた。 「名前、ちょっと来い!」 ぐっと名前の手を掴み、隊舎から出て行く二人。 それを苦笑しながら見送る藍染。 「全く意地の悪い子だよ、名前君は」 その言葉は二人に届く事はない。 誰もいない、資料室に名前を連れ込む平子。 「なんですか、平子隊長。いいとこだったのに」 「名前っ!何考えてんねん!そないに俺の事振り回して楽しいんか!?」 「楽しいですよ」 「…俺の気持ち、お前には迷惑やったんか?」 「中途半端過ぎて迷惑です」 「………さよけ。 ほんならもう諦めるわ」 「ほら、そうやってすぐに諦めようとする。そんな中途半端な好きならいりません。だから手伝ってあげてるんですよ?私の事が隊長の心から離れない様に」 「お前、何言うてんねん」 「私、途中で振られたりするのなんて嫌なんです」 「…ほんで?」 「平子隊長が、今よりもっと私の事好きになってくれないと、不安なんです」 「それって、つまり…」 貴方の心を 私に縛り付けたい 「平子隊長が、大好きなんです」 「もっと早く言うてくれたらええのに。もうとっくにミツヤの虜やで?」 fin | |