四番隊 綜合救護詰所 『過労からくる風邪でしょう。点滴もしておきましたから、一晩ぐっすり眠れば直に良くなりますよ』 『すんません、卯ノ花さん直々に診てもらっちまって』 『お気になさらず。大事な副隊長さんなんですから十分労ってあげて下さいね』 『はい、ありがとうございました』 ベッドの向こう、カーテン越しに聞こえてくる羅武と卯ノ花隊長の声。 結局あの後羅武の手によって虚はあっという間に片付けられ、怪我人は一人も出さずに済んだ。 『そんな訳だ、カヤ。隊のことは心配しなくていいから今日は寝てろ』 カーテンを捲り羅武が顔を覗かせる。 『うん、ほんとにごめん…』 『だから謝んな。お前が具合悪いの気付いてやれなかった俺の責任だ』 じゃ、ゆっくり休めよ。 そう言って羅武は部屋を出て行った。 あの時、もし羅武が来てくれていなかったらと思うとぞっとする。きっと誰一人守れなかっただろう。 真子が気に掛けて羅武に言ってくれたからだよね。今度会ったらちゃんと謝ろう…疑ってごめん、って。 あれこれと考えごとをしているいちに、わたしはいつの間にか眠りに落ちていった。 ―――‐‐‐ すぐ側で人の気配がした。 でも瞼が重くて持ち上がらない。 誰―――? ぎしり、ベッドが静かに沈む。 何者かの手が頬に優しく触れ、唇から温かい感触が伝わってきた。 『う…ん……』 真子…なの? はっきりしない意識の中、柔らかな感触に酔いしれる。 『…しん…じ、真子……』 違う―――――! 一気に現実に引き戻される。 見開いた視線の先にいたのは、真子ではなかった。 ← | → しおり |