『どうりでカヤちゃん、ボクに靡いてくれへんわけや。とっくに隊長はんが手ェつけてたんやから』



目の前の光景に動じる様子など微塵も感じさせず、へらへらと笑いながらギンはそう言った。
同時に背後から聞こえてきたのは心底残念そうな真子の溜め息。





『…ったく覗き見やなんてええ趣味しとんのォ、ろくな大人にならんで』


『将来のために勉強させてもらお思て』


『オマエにはまだ早いわ。ええからとっとと出てけ』


『出てったらまた厭らしいことするんやろ?』


『ガキには関係あらへん』



二人の言い合いが続く間で、自分だけが一人ぽつんと取り残されているようだった。
そうかといっていつまでも真子の膝の上にいる訳にもいかず、離れようと藻掻いてみたけれどがっちり回された腕が簡単にそうさせてはくれない。苦戦しながらも無理矢理振りほどいてなんとかそこから逃れた。





『あのー、わたしそろそろ戻るね』


『はァ!?何でやねん』
『えー何でやの、行かんといて』


そう言ってくっついてこようとするギンは全く懲りている様子もない。すかさずギンとわたしの間に真子が身体を割り入れる。





『アホ、オマエは出てけや』


『三人で遊んだらええやん』


『ふざけんな』


『心の狭い男はモテへんで』


『やかましいわっ』



まったく変なところで息ぴったりだし。何かこの二人って結構仲良かったりするのかも、なんて言ったら真子に怒られるかもしれない。





『わたしも色々と忙しいから。遊ぶなら二人で遊んで?』


『何で俺が…』


『自分の部下でしょ?しっかり面倒見てあげなきゃ』



二人の恨めしそうな視線を背中いっぱいに浴びながら。なるべく気にしないようにそそくさと隊首室を出た。







『あーあ、カヤちゃん行ってもうた』


『…で、オマエはいつまでここにおるつもりやねん』


『遊んでくれへんの?』


『遊ぶかっ』






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