『隊長に仕事させとって、自分は女口説いとるなんて信じられへんわ』


『残念だな、せっかくいいところだったのに…。平子隊長、出来ればもう少し空気を読んで頂きたかったです』


『どう見ても無理矢理にしか見えへんかったけどなァ』



真っ直ぐに、そして少しずつ真子が近づいてくる。



『隊長、珍しく不機嫌なようですね』


『何でやねん。俺はいつもと変わらへんわ』


『でしたらこの妙に威圧的な霊圧を鎮めて頂けませんか?』



ぴりぴりと張り詰めた霊圧が皮膚の表面を撫でる。
藍染さんは何でこんなにも平気な顔をしていられるんだろう。平然と真子の嫌味を受け流しているこの人の心の内が全く読めなかった。


自分の上司にこんな所を見られて少しの動揺も見せないなんて。それとも藍染さんにとってはこんなこと日常的なことで、大して気にもとめていないんだろうか。





『カヤ、何ぼーっとしてんねん。帰んで』


『え、あ…』



強引に腕を掴んで、藍染さんをその場に残したまま勝手に歩き出そうとする。





『平子隊長』


『何や』


『明日、早朝より定例の隊首会がありますのでお忘れなく』


『…解っとるわ』



全く振り向こうとせず会話をする真子に引っ張られながら後ろを振り返ると、藍染さんは相変わらず表情一つ変えず私達を見送っていた。



『おやすみなさい。平子隊長、小春木さん』


『…お、おやすみなさい…』



真子がそれに答えることはなく、無言のままどんどん先へと進んで行ってしまう。それに無理矢理引っ張られるようにして私も自然と小走りになった。



…きっと、からかわれただけだ。
私がちょっと落ち込んでいたものだから藍染さんが面白がってあんなことをした、そうきっとそれだけ。それ以外の感情などあるはずがない。




『…真子?』



自分より少し前を歩く真子に声をかけるが返事は全くなかった。ただ足早に歩き続けるだけ。



『ねぇ、真子。もっとゆっくり歩いてよ…』



何を言ってもこっちを振り向いてもくれない。呆れているのか怒っているのか。いつも見慣れている大きな背中が、今は別人のように思えた。






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