静まり返った夜道を真子と並んで歩く。カランカランと音をたてる彼の下駄の音だけがやけに響いて。その音が煩わしいぐらいに五月蝿い自分の心音を掻き消してくれているようで、少しほっとした。


けれどいくらひよ里がいるとはいえ、この様子じゃなかなか起きそうにもない。
真子と2人きりも同然だと思えば思う程、何を喋ったらいいのかと気ばかりが急いてしまう。





『まったく人の気も知らんとよう寝とんなァ、コイツ』


『でも可愛い顔して寝てるよ?ほんと子供みたい』


『可愛いねぇ…』



背中でぐっすり眠るひよ里に、肩越しにじろりと視線を向ける。
見ているこっちが呆れるぐらい、顔を合わせれば取っ組み合いの喧嘩ばかりしているけど。ちゃんとこの2二人が深い所で信頼し合っていることは何も言わなくても解る。





『ほんと素直じゃないよね。真子もひよ里も』


『アホか。オマエに言われたないっちゅーねん』


『こっちだって真子に言われたくないし』


『ホンマ、可愛ないわァー』


『お互い様でしょ』



そう言ってお互い吹き出して笑い合う。真子の顔を見ているだけで何故か幸せな気分になる。こうやってくだらないことを言い合って、この人の隣をずっと歩いて行けたらどんなにいいだろう。


そんなことをぼんやりと考えながら、いつの間にか彼の顔に見入ってしまっていた。急にこちらを向いた真子と視線が絡み合う。





『…なァ、カヤ』


『な、何?』


『何ちゅーかその…、あれや』



それきり二人の間に静寂が訪れる。何か言い掛けていた筈の真子も気まずそうにしているだけで口を開こうとしない。





『何か話があったんじゃないの?』


『いや、やっぱし今は止めとくわ。ひよ里もおるしな』


『人に聞かれちゃまずいような悪いことでもしてる訳?』


『オマエなァ…、はァ…人がせっかく…』





その時だった。
真子の言葉を遮るように、眠っていたはずのひよ里が顔を上げた。





『コラァッ!カヤッ、オマエ何しとんねん!!』






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