『それにしても残念だったよなぁ…』


『羅武、もういい加減にしてよ』


『そんなこと言ってもなぁ…』



大会が幕を閉じてから数日が経ち手の傷もようやく癒えてきた頃、廷内も普段の忙しない日々を取り戻していた。
ただあの日以来羅武には顔を合わせる度に同じことを言われっぱなし。いつも嫌という程顔を合わせているのだから、こうしょっちゅう言われているといい加減うんざりしてくるというものだ。





『あの時お前さえ怪我でリタイアしてなかったら絶対優勝はうちだったはずだ』


『はいはい、もう終わったことなんだから』


『何だよ。悔しくねーのか、お前は』


『また次頑張ればいいでしょ』



わたしは出ないけどね、という一言はもちろんしっかり付け加えておいた。


当初は十一番隊の圧勝的勝利であろうという前評判を覆して、今大会の優勝はギンを要する五番隊が手にすることとなった。
真子は特に興味なさげだったけれど、あのいつも子供らしからぬギンが表彰式で楽しそうにはしゃぐ姿は見ているこっちまで嬉しくなった。







『お取り込みのとこ悪いけど、ちょっといいかな?』






そろそろ羅武のぼやきにも飽き飽きしてどう話題を切り替えそうかと頭を悩ませていたところで、ちょうどタイミングよく隊首室に入ってきたローズに救われた。



ただあの大会以来ローズとはちゃんと話をしていなかった。恐らく自分の部下が引き起こした一件について、わたしに気を遣ってのことだろう。女の人の気持ちを凄く大切にする紳士な人だから、きっとわたしと南師さん両方の立場を尊重したかったんだと思う。





『カヤ、今ちょっと話せるかな?』


『わたし?うん、いいけど』


『なら俺、ちょっと外出てくるわ』


『いや、ラヴもいてくれて構わないよ』



何だろう、話って。あんなことがあったばかりだ、あまり良くない想像ばかりが頭の中を巡る。
無理矢理に笑顔を作って見せるけど伏し目がちなローズの表情が更に不安を掻き立てた。









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