―八番隊隊舎―


『七番隊の小春木です。書類お持ちしました』


羅武から言い付けられた書類を手に襖の前で声をかけると、中からリサが顔を覗かせた。



『カヤ、ちょうどええとこに来たわ。これから休憩するとこやけど、一緒にどうや?』


『あー…、そうしたい所だけどさっきまでさぼってて羅武に怒られたばっかりだから。すぐ戻らないと』


『羅武なんか、ほっといたったらええやないの。あたしがガツンと言ったるわ』


相変わらず無茶な事ばっかり言うんだから。



『流石にそういう訳には…』



『リサちゃ〜ん。カヤちゃんの事困らせたら駄目だよ〜』


リサの背中越しに京楽隊長ののんびりとした声が聞こえてくる。




『うっさいなぁ、分かっとるわ』


振り向いて一言吐き捨てると、


『カヤ、ちょっとこっち』


突然カヤの腕を掴んで、部屋の前から少し離れた場所へと連れていく。





『ちょ…、リサどうしたの?』


周囲を伺って辺りに人がいない事を確認すると、カヤの耳元で小声で囁いた。





『明日、カヤも来るんやろ?』


明日って…あー、飲み会の事か。





『私もさっき羅武に聞いたばっかだけど、せっかくだし行こうかなって。リサも来るんでしょ?』


『あたしも行くつもりやけど。あたしの事はどうでもええわ』


『何それ。どういう意味?』


聞けば、何で解らへんねんと言いたげに呆れた表情を向けられた。





『どうせ真子も来るんやろ?』


『多分来るんじゃないかな』



気のせいだろうか。
妙にリサの纏う雰囲気に迫力を感じる。





『飲み会なんやから、当然酒も入るやろ?』


『う、うん。まぁ普通そうだよね…』


じりじりと迫ってくるリサに思わず後ずさりしてしまうが、気付けば背後に壁を背負っていた。ばんっと勢いよく壁に手をつかれ、逃げ道を奪われる。





『チャンスやないの。その流れで真子の事押し倒したったらええやん』



それから上に跨ってそれから羽織を無理やり脱がせて、それから…眼鏡をきらりと光らせて次から次へと勝手に妄想を膨らませている彼女の目は何故か虚ろだ。





『ちょ、ちょっと…いくら何でも話が飛躍しすぎじゃない?』





大体何で私が襲う事前提になってる訳?





『何でや。想像しとるだけやし自由やろ』


『…それより、何で相手が真子になってるの?』





もちろんリサにだって言った事はない。
流石にさっきの今だから、ひよ里の口から漏れたとも思えないし。





『あんた、まさかあたしらが全然気付いとらんと思っとったんか?どんだけ分かり易い思てんねん』






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