今回始めて開催されるとは思えないぐらい大会は実にスムーズに滞りなく進められて行った。
何か問題が起こった時のためにと、随所に配備された隠密機動の面々が少々物々しい気もするが。



やはり出場メンバーの中に副隊長を加えている隊が順調に勝ち進んでいるようで、最初のうちは戸惑い気味だった死神達も自分の隊の勝敗に一喜一憂して大いに盛り上がっていた。






『カヤ、調子はどうや?』


『隊長がこんなとこ居ていいの?真子』



どこにいたって目立ってしまう金髪頭が、いつの間にか七番隊の隊士達に混じって応援席に何食わぬ顔で座っていた。



『何もすることあらへんから退屈やねん』


『自分とこの応援でもすればいいのに』


『俺んとこ結構余裕やねんで?ギンのヤツが妙に張り切っとってなァ、見事一回戦突破や』



こら初優勝は五番隊が頂きかもしれへんな。
真子が余裕綽々なのも頷けた。張り出されたトーナメント表を見れば、五番隊は先鋒のギンたった一人だけで相手の五人を倒し勝ち次の試合へと進んでいた。さすが入隊当初から天才と言われていただけのことはある。





『七番隊もなかなかやるやんけ。一回戦オマエ出番なかったんやろ?』


『うちの副将は三席の小椿くんだから』


『あー、あのヤクザみたァなめっちゃ柄悪そうなヤツか』


『ふふ、まぁ確かに見た目は怖そうだけど』



基本的に先鋒から大将までの順番に特に決まりはなく、各隊誰をどう配置するかなど全てはそれぞれの隊長の作戦に委ねられていた。





『良かったわ』


『え、なにが?』


『ガチガチに緊張しまくっとるんちゃうかと思って様子見に来てんけど』



結構大丈夫そうやん、不意討ちにそんなことを言って嬉しそうに笑ったりするから思わずドキッとしてしまった。考えてみればこうして真子と話しているうちに緊張なんてものは不思議とどこかへ行ってしまったようだ。





『なんか真子のゆるーい顔見てたら力抜けて緊張の糸が解れたみたい』


『ゆるいて何や、ゆるいて…』



隣で不貞腐れる横顔とやる気なさげにカーブする猫背を眺めていると自然と心が軽くなっていく。真子はこうやっていつも手を差し伸べてくれる。それはこっちが気付かないぐらいにさりげなくて、それでいて気持ちが暖かくなる。





『冗談。ほんとはね、感謝してる』


『何や急に』


『ありがとう、真子』





いつもいつも、本当に。









- 88 -


|

しおり




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -