次から次へと目に飛び込んでくる風景は、幼い頃に見ていたものと何一つ変わっていなくて懐かしさが込み上げてくる。



通りの両脇にいくつも軒を連ねる鮮やかな屋台は、大人になった今でもやはり心を奪われた。





『カヤ、何か食うか?買うたるわ』


『じゃあ、りんご飴』


『何や、そんなんがええんかい。お子様やなー』


『えー、美味しいのに』





真子から手渡されたりんご飴を舐めながら色々なお店を見て回った。
そのどれもがまるで童心に返ったみたいに気分を高揚させた。





『なァ、ちょい味見させてや』


『え、ちょっと』



突然真子がわたしの食べ掛けのりんご飴に横からかじり付いた。
甘っ、なんて顔をしかめるぐらいなら食べなきゃいいのに。





『食べたかったら真子も買う?』


『解ってへんなァ。こうやってイチャイチャすんのが楽しいんやんけ』


『イチャイチャ…』





通りを埋め尽くすぐらいの群集に身動き一つするのも大変だったけれど、真子と一緒だと思うとそんなこと気にもならないぐらい楽しく感じた。








『あれ、もしかしてカヤちゃんじゃないかい?』


『え?』



声を掛けられた方へ視線を向けると、そこには色とりどりの美しい簪が広げられており、その脇には露天商らしき中年の男が座っていた。





『も、もしかして…昔隣に住んでた飾り職人の…』


『そうだよ、覚えててくれたんだね。いやー、懐かしいな』





だけど立派になったもんだ、そう言って男は過去を思い出すように遠くを見つめて目を細めた。








『だけどあの泣き虫だったカヤちゃんが、こんな素敵な旦那さんを連れてくるとはねえ』


『ちょっと…、変なこと言わないでよ。違うから』


『おっちゃん、ええこと言うやん。よっしゃ、気分ええし何か一個買うてくわ』


『さすがカヤちゃんの旦那さん。太っ腹だ』


『おっちゃんも商売上手やな』


『だ、だから違うってば!』





わたしの必死の弁解も、なぜか意気投合してしまった陽気な男二人の耳には全く届くことはなかった。






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