『ええ加減にせえよ、惣右介。病人の部屋で何しとんねん』 『…相変わらず人の邪魔をするのが好きな人だ』 『アホ、よう考え。どっちが邪魔モンや』 ぶっきらぼうにそう言うと、藍染さんの肩越しにひょいとこちらを覗き込んだ。 『カヤ、身体大丈夫なんか?』 『少し眠ったらだいぶ楽になったから…』 『ならええけど無理するんも大概にせえや』 『うん…、心配かけてごめん』 今度ばかりは本当に呆れられたかもしれない。真子の忠告も聞かずに個人的な感情で勝手に突っ走って、その上自分の部下まで危険な目に遭わすなんて最低だ。 『ま、オマエも休めへんしもう行くわ。あんまし騒いどったら卯ノ花隊長にどつかれそうや』 『あ、うん…。わざわざ来てくれてありがとう』 『たっぷり休養せえへんと成長止まんで?ただでさえちっこいんやから』 『も、もう…ばかっ!』 こんな時でもふざけたことを言って笑ってくれる真子に、可愛くない言葉を浴びせながらもどこか癒されている自分がいた。 『惣右介、ちょお顔かせや。話あんねん』 『話、ですか?』 『そうや、行くで』 藍染さんを引きつれて病室を出て行くときの真子の横顔がいつになく真剣に見えたのは、わたしの気のせいだろうか。 ―――‐‐‐ 『平子隊長。お話というのは?』 『オマエのことや、俺の言いたいことなんてとっくに解ってんねやろ?』 『いいえ、僕にはさっぱり』 張り詰めた空気の中、そこだけは時間がゆっくりと流れているように思えてならない。 そう、藍染惣右介の周囲はいつだって異質な空間で包まれている。こんな状況でさえ薄い笑みを絶やさないその心の内側は一体何を考えているのか。 『いっこ言うとくで。アイツに、カヤに変な真似だけはすんな』 『変な真似?』 『手ェ出すな言うてんねん。カヤは俺の女や』 『それは初耳ですね。一体いつからそういうご関係に?』 『そんなモン決まってるやろ。アイツがお母ちゃんの子宮ン中おった時からや』 中庭の木々を騒つかせ、冷たい風が二人の間を通り抜けた。 2010.07.23 ← | → しおり |