『な、何で…こんな奴が…』


『明らかにあっちのちっさいのとは格が違う。勝てる訳ねえよ…』



隊士達がざわつき始める。
霊圧を消すことが出来るような知能の高い虚がいるなんて最初の報告にはなかった。
でもこの程度なら始解しなくても勝てる。





『とりあえず予定変更ね。演習は次回に持ち越し。虚の相手はわたしがするから、皆は援護をお願い』



全員を自分の後ろに下がらせると、まずは小さな三体を続け様に斬り伏せた。




『す、すげえ…』


『やっぱり隊長格は全然違う…』





不意をついて背後から迫ってきた残りの一体の重い一撃を刀身で受け止める。ぎりぎりと金属音が響き、その部分から火花が散った。






『悪いけど不意をつくならもっと上手く…』


『きゃぁああ…!!』


『!?』



突然隊士の悲鳴が聞こえ、後ろを振り返った。隊士達の立っている向こう側、また別に空間の歪みが四箇所現れる。





『他にもいたの…?』



一体一体の力は大したことはないが、不意をつかれた上に戦意が乱れた状態の彼等の実力では到底勝ち目はない。
五体の虚に囲まれたこの状態で、ここにいる全員を守りながら戦うのは少し厳しいけど…、でもわたしがやるしかない。





奇声を張り上げ一斉に襲い掛かる虚。
鞭のような長い尻尾が隊士目掛けて大きくしなった。
目の前の虚を弾き飛ばすと、瞬歩で隊士達の前に回る。





『縛道の三十九…!円閘せ…』





その瞬間、突き刺すような頭痛に襲われた。視界が揺らぎ、ぐらり身体が崩れ落ちる。


…何で、こんな時に…。





『小春木副隊長…!』



叫び声が聞こえる。
わたしが皆を守らないといけないのに…。





一瞬目の前が真っ暗になり、意識を取り戻したその時、わたしは大きな身体に抱え上げられていた。








『………ごめん、わたし…』


『馬鹿野郎』


『ごめん、羅武……』


『もう喋るな。ったく、真子に言われて様子見に来てよかったぜ』





2010.07.04






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