答えを聞くのが怖かった。 その反面、真実が知りたいというのも本音で。だけど真子の顔が曇るのを見て、聞かなければ良かったとすぐに後悔した。 『やっぱりそうなんだ…。何で黙ってたの?』 『何もやましいことあらへんし、オマエに余計な心配させたくなかってん』 この人の言葉を信じればいい、ただそれだけのはず。 『…じゃあ、隊首室で抱き合ってたっていうのは?』 『はァ?何やねん、それ…。別に抱き合っとった訳とちゃうわ』 本音はこんなこと聞きたくないし、こんな風に惑わされないでもっと毅然としていたいけど。でも自分の中の弱い部分が決してそれを許してはくれない。 『なァ、俺のこと信じられへんか?』 『違う、そうじゃないけど…』 『て、俺が不安にさせとるんやんな。済まん』 『謝らないでよ。別に真子を責めてる訳じゃない』 何やってるんだろう。 こんなの全然自分らしくないじゃない。 じゃあ、わたしらしいってどんなの? 解らない、考えがまとまらない。 頭痛がひどくて、もう何も考えたくない。 『わたし、もう行かないと。今日実技演習の引率頼まれてるから』 『何言うてんねん、そんな状態で行かせられる訳ないやろ。羅武に言うて他のヤツと代わってもらえ』 『平気。薬も呑んできたし、じきに良くなるから』 『ちょ、カヤ…待てって』 後ろで真子がまだ何かを言っているみたいだったけれど。その言葉がわたしの耳に届くことはなかった。背中越しに聞こえてくる彼の声が今は遥か遠くに感じた。 ← | → しおり |