『お早うございます!』


『お早う』


『お早うございます、小春木副隊長』


『お早う』



廊下の端に寄り頭を下げる隊士達の間をすり抜けながら隊首室へと向かう、いつもと変わらない一日の始まり。
なんか今日は朝から身体がだるいし熱っぽい気がする。ここの所忙しかったし疲れが溜まってるのかも。









『ねぇ、そういえば知ってる?平子隊長が隊首室に女の人連れ込んでたって噂』
『嘘、知らない』
『何かこの間も抱き合ってたって』
『えー、ほんとに?』





どこからか聞こえてくる囁き声に思わず反応して足を止めてしまった。振り返ると先程挨拶を交わしたばかりの女隊士達が身を潜めてこそこそと話し込んでいる。





『で、相手は誰なの?』
『わたしも人に聞いただけだからよく知らないんだよね。でもその子結構頻繁に五番隊に通ってるって話』
『誰だろ、いいなー』
『平子隊長素敵だし、彼女いてもおかしくないよね』
『でもさ、』





『あなた達』



背後から声をかけると、二人の肩がびくりと跳ね上がった。





『根拠のない噂を言いふらすのはあまりいい事とは思えないけど?相手にも迷惑でしょ』


『は、はいっ。そうですよね!』
『申し訳ありませんでした!』





頭を下げると逃げるように去っていく二人をぼんやり見つめながら胸の奥が疼くのを感じた。





抱き合ってたって。





結局のところわたしはあの二人の話をあれ以上聞いていたくなかった。ただそれだけ。
根拠のない噂、そう思いたいのは自分自身だった。






―――‐‐‐






『何だお前、その顔。寝不足か?』



顔を合わせるなり、いきなりの羅武の一言。





『ちょっと、朝からいきなり失礼なんじゃない?』


『お前こそ朝っぱらからその最悪な顔はないだろ』



体調がすぐれない上に朝からあんな話を聞かされたら最悪な顔にもなる。





『真子とうまくやってるのはいいけど自分の体調管理ぐらいちゃんとしろよな』



そんな風に冗談を言って笑う羅武に、さすがにそれは言えるはずもなかった。






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