それからというものギンは、真子や藍染さんの目を盗んでは時々七番隊隊舎を度々訪れていた。



『ギン、そろそろ戻らないとまた真子に怒られるよ』


『せやなァ、そろそろ戻らな隊長はんの雷が落ちそうやし。この干し柿もろてってもええ?』


『いいよ、全部どうぞ』


『全部ええの?おおきに』



両手に干し柿を抱えて嬉しそうに去っていく後ろ姿はやっぱり幼くて、そんな姿を目にしたら思わず頬が緩む。
これで急に大人びたこと言って困らせたりしなかったら本当に可愛いんだけど。





『さ、わたしも仕事しないと』



最近は頻繁に通ってくるギンにお付き合いしていたせいで、自分の仕事も思うように進んでいない。





『羅武、ちょっと外回りしてくるから』


『おう』



隊首室で書類と格闘している羅武に声をかけて。とりあえず各隊に回す書類もたまっていたのでそれを抱え外回りに出ることにした。




―――‐‐‐





各隊を順番に回りようやく五番隊。隊首室前で立ち止まると中の様子を伺うようにそっと襖に耳をつけた。



何かやけに静かだ。
いつもなら藍染さんのお説教や、二人の言い合いが外まで聞こえてくるのに。物音一つしないけど誰もいないのかな。





『失礼しまーす…』



ゆっくりと襖を開けて中を覗き込むと、そこには机に突っ伏した真子の頭。



なんだ、いるんじゃん。
静かに近付いてみれば、大きく上下に揺れる肩と何とも気持ち良さげな寝息だけが聞こえてくる。





『寝てるし…』



少し話したかったんだけど残念だな。でも仕方ないよね、色々と忙しくてまともに寝てないんだろうし。


横からちらっと覗くその寝顔は、男のそれとは思えない程に綺麗で。はらりと落ちた髪が顔にかかってますます艶っぽく見えた。
指先で恐る恐る肌に触れてみると、ぴくっと反応して一瞬だけ綺麗な顔を歪める。



何やってるんだろ、わたし。
起こしたら悪いしもう帰ろう。



渡すはずだった書類を机の隅に置き立ち去ろうとすると、急に伸びてきた手に手首を掴まれた。






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