『平子隊長、今日はご機嫌ですね』 『そうかァ?そんなことないで』 『この奇妙な音楽もいつもに増して五月蝿いですし』 『奇妙て失礼なやっちゃな…。ジャズや言うてるやろ』 まァ、何とでも言うたらええわ。 今の俺はごっつい気分がええからな。いつもなら鬱陶しいコイツの嫌味もぜんっぜん気にならへんわ。 『…そういやギンのヤツが見当たらんみたいやけどどこ行ってん』 『おかしいですね。ついさっきまでこの辺りをウロウロしていたのですが…』 まったくここんとこアイツに振り回されっぱなしで大迷惑や。初日から遅刻してくるわ、隊首室ン中ちょろちょろ動き回って色々荒らしよるわ、とにかく大変やった。 おったらおったでやかましくて面倒やけど、何かあったら隊長責任やからなァ。 『惣右介、オマエ教育係やろ。ちゃんと面倒見いや』 『そう言われましても僕も何かと忙しい身ですからね。うちの隊はもう一人子供を抱えてるようなものですから』 『もう一人の子供って誰やねん…』 『さあ?ご想像にお任せします』 ギンといい惣右介といい、ホンマうちは問題児ばっかやな…。泣けてくるわ。 目の前にあるこれでもかという程爽やか過ぎる笑顔に、思わず顔が引きつった。 『どこ行ったか心当たりあらへんのかい』 『そうですね…そういえば五番隊に自分好みの女性がいないとごねていたので』 『アイツ…、どんだけマセガキやねん』 『で、教えてあげました。七番隊を』 は…? 何やて、七番隊? 『ちょお待て。何で七番隊…』 『七番隊なら小春木さんがいるじゃないですか』 『………あンのくそガキっ!!』 『あ、隊長。七番隊に行かれるのでしたらついでにこの書類もお持ち下さい』 『何やねん、早よよこせやっ』 隊首室を飛び出しかけたところで呼び止められて、悠長に書類を差し出す惣右介の手からそれをひったくった。 ギンのヤツ、カヤにおかしなことしよったらただじゃおかんからなァ。 2010.04.30 ← | → しおり |