『そういやカヤ、真子から聞いてるか?今年の五番隊の新入隊員に天才って言われてる奴がいるらしいぜ』


『五番隊に?』



そういえばもうそんな時期だったんだ。
考えてみれば最近は色々と気持ちに余裕が無さすぎて、真子とゆっくり話すどころじゃなかった。





『何でもたった一年で真央霊術院を卒業したらしいしな』


『一年…』


『歳は朽木隊長んとこのお孫さんぐらいらしいが、入隊と同時に席官だそうだ』


『そんな若くてもう席官?凄いね』



あの真央霊術院をたった一年で卒業するというだけでも相当なものなのに、更にその若さですぐに席官の座が用意されているような者などなかなか居ない。





『まったく末恐ろしい奴が出てきたもんだぜ。このまんまじゃ俺らの立場も危ういな』


『隊長のくせに何言ってんの。しっかりしてよね』


『まあ俺はのんびりやってんのが性に合ってるからな』


『でもそんな有名人なら是非お目にかかってみたいなー。ね、名前は何て言うの?』



別にうちの隊に入る訳でもないし関係がないことだとは言っても、天才なんて呼ばれていると聞けばやっぱり興味をそそられる。





『うーん、何て言ったかなぁ…自分の隊には関係ねえことだったし…』


『…もしかしてもう忘れたの?』


『ちょっと待て、今思い出すから。えーっと確か市なんとかだったような…。市松じゃねえし…』














『ギンや、市丸ギン』



『おう、それだそれ。って、お前…』



『もしかして君…』





驚いて振り返った二人の視線の先で、綺麗な弧を描いた狐目の少年が薄ら笑みを浮かべて佇んでいた。







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