『…なァ、どう思てんねん』


『わたしは…』



わたしだってずっと真子のことを見てきた。気持ちなんて昔から変わらない。



『わたしの気持ちは…』



沈黙が時間を何倍にも長く感じさる。どれぐらい時間が経っただろう、そう考えてみるけれどきっとそれはほんの数分のこと。それでもわたしにとっては気の遠くなる程長く思えた。






『済まん、カヤ。先謝っとくわ』


『え?』



先に口を開いたのは真子の方だった。



『俺、あんまり気ィ長いほうやないねん』





何が言いたいの?そんなことを考えている余裕なんてなかった。





急に柔らかい感触が唇を包み込む。ふわりと表面を撫でるようなその感触と、目の前に広がる真子の綺麗な顔に頭がくらくらする。





『…っふ、』





朦朧とする意識の中で呼吸をするのすら忘れていたわたしは、やっとの思いで息を吐き出した。




『おーい、息せんと死んでまうで?』



人の気も知らないで、真子は余裕の表情でくっくっと喉を鳴らす。





『い、いきなり何すんの…』


『先に謝ったやろ』


『謝ればいいって問題じゃ…』


『で、カヤの返事は?』



勘のいいこの人のことだ。
もうわたしの気持ちなんで解っているくせに。





『…もうとっくに気付いてるんでしょ』


『いや、俺物分り悪いねん。せやからちゃんと言うてくれんと解らへんわ』


『嫌いだったらとっくに引っ叩いてる』


『ほんで?』


『真子のこと嫌いじゃないよ』


『…オマエもなかなか強情なやっちゃなァ』



呆れたように笑った真子の顔が近付いてもう一度唇が重なった。今度はさっきみたいに触れるだけじゃない、深くて優しくて身体の芯から溶かされてしまうようだった。








『…真子のこと、ずっと好きだった』



ようやく口にしたら、少しびっくりしたように目を丸くして。



『ちゃんと言えるやん』



痛いぐらいに抱き締められた。もうこのまま離してもらえないんじゃないかと思うぐらい強く。




『カヤってちっこいんやなァ』


『ば、馬鹿にしないでよっ』



すっぽりと真子の腕の中に納まったまま耳元で囁かれて少し擽ったい。
彼の香りを胸いっぱいに吸い込みながらこれ以上ないぐらい幸せで満たされていた。





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