『好きや』





ずっとずっと待ち焦がれた言葉だった。










『…なァ、何か言えや』


『えっと…』


『俺だけめっちゃ恥ずいやんけ』




暴れ出した心臓が煩わしいぐらいに五月蝿い。密着した背中から伝わってくる真子の体温のせいでますます思考が鈍っていった。





『カヤ、こっち向き』


『無理』



自分の方を向かせようとする真子に精一杯抵抗してみせる。
背中越しのこの距離ですら今にも倒れてしまいそうなのに、彼の顔を正面から見るなんて到底無理な話で。





『しゃーないなァ…』



ふっと微かに聞こえてくる溜め息。






『…ったく、オマエはホンマ生意気やし口は悪いし』


『え…?』


『しょっちゅうサボって隊長困らせとるとんでもない副隊長やし、』


『ちょ、ちょっと!サボってはいるけどしょっちゅうじゃないから!』



勢いで振り向いてしまってすぐに後悔することになった。
そこには口角を上げて勝ち誇ったように笑う真子の顔があったから。単純なわたしはまんまと彼の策略にはまってしまったみたいだ。




『単純なヤツ』


『五月蝿い、ほっといて…』


『しょっちゅうやなくても、サボっとることに問題あるやん』



そう言って屈託なく笑う彼の笑顔が眩し過ぎて真っ直ぐに見ることが出来ない。





『オマケに、どこぞの副隊長に抱き締められて身動きとれんくなっとるような危なっかしいヤツやし』


『あ、あれは…』


『目ェ離せへんねん、オマエから』



ずーっと見とった。
カヤの楽しそうに笑う顔も、時々見せる悲しげで辛そうな顔も、生意気なこと言うて怒っとる顔も全部。
何年も何年も前からずっと側で見とったんや。





『カヤのことが好きや』


『…』


『オマエはどう思てんねん、俺のこと』






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