最悪だ、私。
ろくに知りもしないで勝手なことばかり言って、真子の話も聞かずに逃げ出した…。
自分に彼を責める権利など自分にはありもしないのに。



ぽつり、ぽつり。
見上げた夜空が泣き出していた。



昔から雨はあまり好きじゃない。
空を覆うあの分厚い雲のように心まで暗く澱んでいくような気がして。それが落ち込んだ気分の時なら尚更だった。





―――‐‐





『おはよう、真子。何か今日は心此処に在らずって感じだったね』



翌朝、定刻通りに執り行われた隊首会が終わり、各隊長達が散り散りに自隊へと戻っていく。
そんな中でいつもと様子の違う真子を気にして、ローズが声をかけた。





『おかげで総隊長サンにどやされてもうたわー…』


『何だよ、真子のくせに悩み事か?気持ち悪ぃな』


『あのなァ、羅武…俺かてデリケートに出来てんねんで?そら悩み事の一つや二つあるっちゅーねん』



…まァ、こない悩むんもえらい久々やけどな。昨日からずーっと頭ン中そこら中、カヤのことでイッパイや。
ホンマ病気としか思えへんわ…。





『なァ、ローズ。オマエんとこの今度昇進した…』



真子が言いにくそうに口を開いた。



『ああ、南師さんのこと?彼女がどうかした?』


『いや、どうもせえへんけど…。何かひっかかるっちゅーか、スマン上手く言えへんねんけど…』


『もしかして彼女に惚れたから仲を取り持ってくれとか言わないよね?』


『アホ、そんな訳あるかい』


『冗談だよ。真子が昔っからカヤ一筋なのは知ってるよ』



そう言って何もかもお見通しだと言いたげに薄ら笑いを浮かべるローズ。



何やねん、そんなん言われたら何も言い返せへんやろ…。






『彼女、もとは流魂街の出身らしいよ。詳しい理由までは知らないけど、誰かに追い付きたくて必死にここまで頑張ってきたってのは確かだね』


『…へぇ、もしかして惚れた男の為にってヤツか?相手は誰なんだ?』



さっきまで黙って話を聞いていた羅武が急に口を挟む。



『さあね、いくら隊長だからってそこまでは干渉しないよ。それじゃ、僕こっちだから』



真子と羅武をその場に残して、ローズは三番隊隊舎へと消えて行った。





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