『お、お疲れさ〜ん。平子隊長』 『春水サン、こないなとこで副官も連れずにどないしたんですかァ』 隊舎と隊舎を繋ぐ渡り廊下でばったり会った二人。軽く手をあげて近付く京楽がいつもの調子で平子に話し掛ける。 『うちのリサちゃん、ちょっと前にカヤちゃんのとこ行くって出てったっきり戻ってこないんだよ』 『アイツら何考えてんねん…。休憩にはまだ早過ぎるやろ』 『まったく何してるんだろうねぇ』 『リサのヤツにビシッと言ったったほうがええんとちゃいます?』 『う〜ん…でもリサちゃん可愛いから。可愛い子には甘いんだ、ボク』 どこをどう見たってただの変態にしか見えへんのは俺の気のせいやろか。口開いたらしょーもないことばっか言いよるし。 思わず口にしてしまいそになったが、嬉しそうに話す京楽の顔を見て慌てて言葉を飲み込んだ。 『平子隊長はやっぱりカヤちゃんかな?ボクも結構好みだなぁ、彼女』 『何でそこでカヤの名前が…』 『おや、違ったかな?二人は特別仲がいいみたいだしてっきりそうだと思ってたんだけど』 意味深な笑みを浮かべ花笠越しに見え隠れする視線に、何もかも見透かされているような気がした。 何や、おかしな話になってきたな…。 早めに切り上げんと、根掘り葉掘り聞かれて面倒なことになりそうや。 そう思い、先程から自分の後ろに黙って控える藍染に声を掛けようと振り向いた矢先。 『僕も小春木さんは素敵な女性だと思いますよ』 な、ななな何言うてんねや…コイツ。話を広げんでええっちゅーねん! 『コラァ、惣右介!』 『あ、失礼しました。隊長達のお話に…』 『いんや構わないよ、惣右介くん。君とは女の子の趣味が合うみたいだね』 『そうですね、僕もそう思います』 この二人こない仲良かったか…? 好みの女の話で盛り上がる京楽と藍染を不審に思いながら見比べる。 『…あ、つい話し込んじゃってすまなかったね。そろそろリサちゃんも帰ってるかもしれないし戻るとするよ』 じゃあまたね。平子隊長、惣右介くん。 そう言って女物の羽織をひらりと翻すと、優雅にその場を立ち去って行った。 『俺らも行くで、惣右介』 …一体何やったんや。 にしても惣右介のヤツこの前のことといい、やっぱしカヤに気があるんとちゃうやろな? 『どうかされましたか?平子隊長』 『いや、オマエ…』 『はい、何でしょう?』 …やっぱムカつく。 ホンマ気に食わんヤツや。 『何でもあらへん、行くで』 『はい』 何やろ、この変な感じは。 よう解らへんけど、なーんか気分がスッキリせえへんわ。 2010.03.01 ← | → しおり |