『ひよ里、ひよ里ってば!』


『…うちはまだまだ呑めるでェ…』



いくら揺さ振ってもただうわ言のようにそれを繰り返すばかり。
相当呑んでたし当たり前だよね。喜助の隣だってあれだけ嫌がってたくせに意外と一番愉しんでたかも。





『ねー、ひよ里』


『う…ん…』


どうしよう、皆も帰るしこのままほっといてに置いていく訳にも行かない。





『あたしは白と同じ方向やし、一緒に帰るわ。問題はひよ里やね』


『ボクが送っていくッスよ』


『だけどこいつが目覚ました時に目の前にあんたがいたら、また暴れだしかねないぜ?』


『確かにそうッスね…』



その間にも何度か声をかけてみるが、完全に泥酔しきったひよ里が起きる気配はなかった。





『私が送ってく』


『カヤが?あんた1人で大丈夫やの?』


『大丈夫、大丈夫。何とかなるって』



とりあえず畳の上で眠りこけるひよ里の身体を起こしてから、両手を自分の首に回して背負いゆっくりと立ち上がる。





…おもっ。



なんて言ったらひよ里に殺される。だけど小さい身体して意外に…。
必死になってようやく立ち上がった瞬間、背中がふっと軽くなった。





『アホ、そないフラついとったら部屋までもたへんで。俺が行くわ』


『真子、私なら大丈夫だよ』


『脚プルプルさせとったヤツがよう言うで』


『…』



私なんかとは違って、あっさりひよ里を背負ってしまうあたり、やっぱり男の人だなぁと意識せずにはいられない。





『その代わり男の俺がコイツの部屋勝手に入る訳にいかへんし、カヤは強制連行な』


『え、あ…うん』



そしてそのまま皆で店の外へと出た。時間を忘れかなり遅くまで騒いでいたため、表の通りにはすでに人の姿もまばらだ。夜風が吹き抜けるとぞくりと身体が震えた。





『じゃあ、また明日ね』


『おう、お前らも気ぃ付けてな』


『カヤ、真子に襲われんように気をつけやあよ』


『人の事、何やと思てんねん…』



今だ店の前で談笑する皆を残して、ひよ里を背負った真子と一緒に私達は先にその場を後にした。






『何かこうやって後ろから見とると、あの二人夫婦みたいやね』


『ひよ里があいつらの子供ってか?』


『そう見えるやろ?』


『まぁ、見えなくはねぇな。
…まったくあいつらもいい加減素直になればいいのにな』



羅武とリサがこっそりとそんな事を話しているとも知らずに。





2010.02.01






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