隊舎から然程遠くない距離にあるその飲み屋は歩いてすぐの場所にあり、隊長格の間では御用達のようになっている店だ。



『いらっしゃいませ〜!』



店の暖簾をくぐり店主に案内されて奥にある個室へと進むと、すでに拳西や白、ローズが席を囲んでいた。





『あ〜っ!みんなやっと来たぁ!!』


『何だ、お前ら羅武達とは一緒じゃなかったのかよ』


『羅武は真子達に声かけてから行くって。多分もうすぐ来るんじゃないかな』


『喜助のヤツもハゲらと一緒に来るやろ』



とりあえず適当に座って、残りの三人を待つ事にした。私もちょうど空いていた白とリサの間に腰を下ろそうと場所を移動する。





『カヤ、ここは駄目や。向こう行き』


『え、ここ駄目なの?』


『せや、その場所はアカンで。カヤはそっち座り』



加わってきたひよ里に指示されて、訳が解らないまま言われた通りの席に腰を下ろした。



怪しい…。何か作為的なものを感じるんだけど。ひよ里の方に視線を向けると、わざとらしく逸らされた。





『別に席なんてどこだっていいだろ』


『アカンもんはアカンねん』



そんなたわいもない会話をしているうちに、到着した羅武達が店主に連れられてやって来た。





『お、もう皆揃うてるんか』


『俺らが一番最後かよ』


『皆サン、こんばんわッス』



遅れてきた三人が席につこうと座敷に上がり込むと、すぐにリサが口を挟んで取り仕切りはじめた。





『羅武はここや。喜助はひよ里の隣で、真子はカヤの横座り』


『何や、もう席決まっとるんかいな』





…やっぱり。何となくこんな事になるんじゃないかって気はしていたけど。それにしたってリサ、これはあからさまじゃない…?
心配になってリサの方を見ると、大丈夫やと口が動いてびしっと親指を立てられた。





『ま、たまにはカヤに酒の相手して貰うんも悪ないかァ』


『べっぴんさんじゃなくて申し訳ないですけど』


『まだ覚えとったんかい』


『当たり前でしょ?』



まったくオマエには適わんなァ、白い歯を覗かせて苦笑いしながら私の隣に胡坐をかく。真子が座った瞬間、ふわりと横から漂ってきた甘い香りに妙にドキドキして。こんな事でこの先大丈夫なんだろうかと不安になった。





『ちょお待て、リサ!喜助がうちの隣やなんて聞いとらへんでェ!!』


『たまにはこういう場で隊長、副隊長の交流でも図ったらええやないの』


『そうッスよ、ひよ里サン。ボクと交流図りましょ』


『喜助!オマエには聞いてへんねん!!』


『痛い!』



どうやらひよ里も私と同じくリサの企みにはめられた一人らしい。
荒れるひよ里の拳が喜助の顔面に命中し、こうして飲み会は波乱の幕開けとなった。






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