『はァ…』


さっきから溜め息だけはいくらでも出るが、仕事の方は一向にはかどらず。
頬杖をつき目の前の書類を眺めながらも、内容など全く頭に入ってこない。



またアイツにいらん事言ってしもた。
…ホンマに俺、思春期のガキみたァやな。好きな子程いじめたなるっちゅーアレやろか。



ええ大人が何しとんねん…。




『平子隊長、一体いつになったら仕事を始めて下さるんですか?』


『分かっとるわ。今やっとるやんけ』



見兼ねた惣右介が横から口を挟んでくる。


相変わらずごちゃごちゃ五月蝿いやっちゃなァ。元々俺は惣右介んこと信用してへんし、危険因子やと思うとるからこうやって側に置いて監視はしとるけど、ホンマはこーゆうタイプごっつい苦手やねん…。





『恋煩いですか?』


『…はァ!?』


いきなりの確信をついた質問に素っ頓狂な声を上げてしまった。





『申し訳ありません、出過ぎた事を。先程から溜め息ばかりついておられるので』


『アホ、そんなんちゃうわ』



言いながらも内心穏やかではなかった。
惣右介にまで見抜かれとるなんて俺も落ちたモンやで…。





『…差し出がましいついでにもう一つ。ちなみにその相手は小春木さんですか?』


『だからそういうんちゃう言うてるやろ』


『そうですか』


『何でそこでカヤの名前が出てくんねん…』



いえ、お気になさらず。単なる僕の個人的な興味です。
そう言ってコイツは例のごとく、俺の心底苦手なあの笑顔を向けてきよる。



アイツの名前出されたら、尚のこと気になるやんけ。っちゅーか個人的な興味て、コイツまさかな…。





『さぁ、隊長。さっさと仕事を片付けてしまって下さい』


疑いの眼差しを向けるもあっさりとかわされ、結局いつものペース。
普段から惣右介は人に対してあんまし執着することなんてあらへんし、ましてやコイツん口から女の名前が出るやなんて珍しいことや。


気になりながらもいつものあの小言をまた聞かされるのも面倒だと、仕方なく執務に没頭した。





2010.01.25






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