『あー、そういやアイツそんな事言ってたな。で、どんな感じだった?期待の新人ってヤツは』



…良かった。羅武が話に乗ってくれて。
一回小言が始まるとなかなか収まらないからな…。




『うーん、会ったばっかりだしよく分からないけどすごく可愛い子だったよ』



ふーん、と特に興味もなさそうな生返事が返ってくる。





『興味ないの?きっと羅武もああいう子が副隊長だったらって思うかも』



仕事も真面目にこなしそうだし、性格も良さそう。それに器量だって申し分ないんだから。





『別に。俺は今の副官に不満はねぇし。…まぁ、サボり癖だけは何とかして欲しいもんだけどよ』



頭を掻きながら照れたように背を向ける大男の姿が、我が隊の隊長ながら何とも可愛らしい。





『もー、羅武もたまにはいい事言うじゃん。愛してるっ!』


『ちょ、オマエ…くっつくな!!』


『またまたぁ、照れちゃって』



羅武にはこんなに簡単に自分の気持ちを伝えられるのに、相手が真子となると余計な考えが邪魔してなかなか簡単にはいかない。
いつの日か真子にもちゃんと伝えられる時がくればいいんだけど。



その時忘れかけていた疑問がふと頭を過った。…そういえば、南師さんの言っていた憧れの人って結局誰だったんだろう。



その人に近づきたいが為に頑張ってきたって言ってたし、あの様子からしてよっぽど好きなんだろうけど。





『おい、カヤ。遊んでないでとっとと仕事片付けねえと、明日残業するはめになるぞ?』


『はーい。分かってます』



羅武に急かされて、私は机の上に山積みにされた書類に向かい合った。






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