『そうだ浦原隊長、もう耳にされましたか?』


『何をっスか?』



目の前で繰り広げられる自分の隊長の悲惨な有様を大して気にとめる様子もなく、藍染さんはのんびりとまるで世間話でもするかのように話を切り出した。



『流魂街での変死事件についてです』


『変死事件…?』


『おいおい、何だよそれ。穏やかじゃねぇな』



さっきまでの穏やかでのんびりした雰囲気から一転、急に空気がぴんと張り詰めるのを感じた。最近はめっきり大きな案件にお目にかかることもなく、虚の表立った行動もなかった。平和呆けしていたという訳ではないけれど変死などという物騒な言葉は久々に耳にした気がする。



『それや俺が言いたかったんわ!ナイスフォロー惣右介!!』



藍染さんの一言で真子が我に返ったように勢いよく顔を上げる。ついさっきまで周囲のことなんてまるでお構いなしとばかりに掴み合いの喧嘩をしていた両者がようやく静かになった。





『変死事件て、一体何なんスか?』


『ここ一月程流魂街の住人が消える事件が続発しとる。原因は不明や』



真子の話はにわかには信じがたいものだった。これが虚の仕業ともなれば護廷十三隊が動いてとっくに鎮圧しているはずだ。それが一月もの間原因も分からずに放置されているというのは、余程困難を窮めているんだろうか。
それを察してか誰もが明らかにさっきまでとは違う厳しい表情になる。





『ねぇ、真子。消えるってどこかにいなくなっちゃうってこと?』


『それやったら蒸発て言うやろ』


『じゃあ一体…』


『消えるねん、服だけ残して跡形も無く』



死んで霊子化するのであれば着ていた服も消えるはず。そうなると死んだとは考え辛い。
普段なかなか見せることのない少し強張った表情。そんな真子を見ていると、今回のことがやはり唯事ではないんだと改めて思い知らされた。



『生きたまま人の形を保てんようになって消滅した…そうとしか考えられへん』


『人の形を保てなく…?』



こういったことには滅法詳しそうな喜介ですら怪訝そうに顔をしかめた。



『ともかくそれの原因を調べる為に今九番隊が調査に出とる』



拳西と白が…。


九番隊が動いているのなら大丈夫、何も心配はないはず。なのにいい表せないような不安感はいつまでも胸の奥底に残ったきりだった。





2011.03.19









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