『おー、喜助やないか。おはようさん』


『おはよっス、平子サン。それに皆サンも』


『シンジでええ言うてるやろ。めんどいやっちゃな』



喜助とひよ里、それにマユリ。何度見てもこの三人が一緒にいるという光景に違和感を覚えずにはいられない。明らかにタイプの違うこの三人が普段一体どんな会話をしてるんだろう、ちゃんと統率はとれているんだろうか。まぁどう考えたって喜助が虐げられてるんだろうけど。





『おはようさん、マユリ』


『余所余所しく涅と呼べと言っているだろう。不愉快な男だネ…!』


『…めんどいやっちゃなァ』



あからさまに眉間に皺を寄せる真子に対してマユリはそんなことは全く気にしていないとでも言いたげにふい、と興味なさげに顔を背けた。マッドサイエンティストと呼ばれる彼にとって研究対象となるもの以外に興味の矛先を向けることなど到底ありえないことだ。きっと人とのコミュニケーションなど彼の中では無用の産物なんだろう。





『そういや喜助…聞いたかオマエ、あの話』


『どの話っスか?』



何かを思い出したのか真子が喜助に話を振った瞬間。
ずどん、突然大きな鈍い音がしたと思えば背後からのひよ里の渾身の蹴りで真子の身体がありえない方向に曲がっていた。



『痛ぁ!!何やねんひよ里、いきなり!?』


『うちへの挨拶がまだやっ!!!』


『なんでオマエに挨拶せなアカンねん!!』


『アカンに決まってるやろ、流れ的に!』



真子とひよ里が顔を合わせればこんなことは日常茶飯事のことだ。真子の身体がいつまで保つかは別として、この二人はこうでないと何だか物足りない。

周囲を歩く隊士達が驚いて足を止まるのも憚らず取っ組み合う二人の姿を、平然と見守るわたし達の中で喜助だけはただ一人困ったように笑っていた。



『あ痛たたたたたァっ!!ちょっ…、カヤ!黙って見とらんと助けろや!!』


『知らない。自分で何とかしたら?』



こんな変態男のお願いなんか絶対に聞いてやらない。ふん、と外方を向きながらもみ合う二人を横目でこっそり見下ろした。









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