(…アホッ!羅武、見えへんやろ!!その邪魔な髪型どうにかしろや!)


(おめえがちっせえのが悪いんだろーが、ひよ里)


(あんたら興奮し過ぎや、バレるやろ。まったく連れてこんかったら良かったわ)


(リサっ!あの二人がやらしーことしとるかもしれへんから見にいこうてオマエが無理矢理連れ出したんやんけ!)


(あんたらだって興味津々でついてきたやない)



空耳…だと思いたかったけれどそんなわたしのささやかな願いはあっさりと打ち砕かれた。野次馬根性丸出しの集団が、カーテン一枚隔てた向こう側で大暴れしている。これでは気付いてくれとでも言っているようなものだ。知らずに不用意な行動をとらないで済んでこちらとしては助かったけど。



(ねーねー拳西!カヤたんとシンズィっていつからそういう関係なのぉ?)


(俺が知るか!白、少し黙ってろ!!)



大事な試合の最中こんな所に、ましてや隊長格ばかりが集まっていてもいいものだろうか。今頃会場で隊士達が大騒ぎになっていないかと逆にそっちの方が心配になってくる。『まったくアイツら暇人過ぎるやろ…』せっかくの雰囲気を邪魔された腹いせと言わんばかりに真子は仕切られたカーテンを勢いよく開け放った。





『…で、オマエらは何してんねん』



ぴたり、とさっきまでの騒がしさが嘘のように静まって、双方の間に気まずい空気だけが流れる。視線を泳がせて決してこちらと目を合わせようとしない皆を冷ややかに真子が睨む。





『う、ウチらはただカヤが心配で様子見にきただけや。なァ、羅武』


『お、おう。隊長として自分の部下が心配でだな…』


『白々しいで。ぜーんぶ聞こえとったわ。まったくリサもおかしなことばっか考えよんなァ』


『ケチケチすんな、見て減るもんでもないやろ。真子、あんたそれでも男やの?』


『アホか、見せモンとちゃうわ』



きっとこの中の誰よりも期待に胸を膨らませてここに来たはずのリサは、中途半端なこの展開にひどくご立腹みたいだ。真子に詰め寄る姿はどこか鬼気迫るものがあった。





『なぁ、そろそろ行かねーとやばくねえか?』


『拳西の言う通りやな』


『待ちや、まだあたしの話終わってへんわ』


『うっさいのォ。ホンマにリサは万年発情期やな』


『発情期やないわ!興味津々なだけや!!』



そのあとなかなか納得しようとしないリサに苦労しつつ、すで大会も終盤にさしかかろうとしている会場へと向かった。わたしにとって長かった一日がようやく終わりを告げようとしていた。





2011.01.13









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