いつかは決着をつけなければならない、それが自分の意図に反して少し早く訪れただけのこと。そう考えたら幾らか気持ちが楽になった。…違う、そう考えなければ自分の中で俄かに泡立ち始めた言い様のない感情を押し殺すことが出来なかったから、だけなのかもしれない。



あの時はたまたま居合わせたギンに助けられる結果になったけれど、結局のところ全てに決着をつけられるのは他の誰でもない、わたし自身だ。






『勝者三番隊、南師皐!』



一回戦を突破し三番隊を相手に一人二人と順調に勝ち星をあげていく七番隊だったが、中堅の南師さん一人を前にいとも簡単に破れ去っていく隊士達。
勝ち名乗りを受けてもどれだけ多くの声援を浴びてもその表情は一切変わることはなく、まるで彼女の目的は別の所にでもあるようだった。





『おいおい、相手は新人の七席だぜ…。うちの連中は何やってんだよ』


『これが南師さんの実力、ってことだよ』



あれだけ試合に出ることに嫌気がさしていたはずの自分が、何故か今は不思議と腹を括っていた。そして自分が戦うことになるかもしれないその相手をただじっと見据えた。





『七番隊副将、小椿刃右衛門。三番隊中堅、南師皐。前へ!』



舞台上で向かい合う二人は、傍から見ていても明らかに南師さんには不利に見える。
屈強で強面な男と、方や華奢でまだ少女のようなあどけなさが残る女。そして三席と七席、力の差は誰が見ても歴然だった。



やはり予想通り開始早々から小椿くんのペースで試合が進む。これで鬼道が使えさえすれば南師さんにもどれだけか勝機があったかもしれない。交わる刃も簡単に力で押し返され、弾け飛ぶ小さな身体。その場にいる誰もが、七番隊の勝利を信じて疑わなかった。











『うお…っ!?』



だが試合の決着は意外な程一瞬で決まることとなる。


押され気味だった南師さんは素早い動きでほんの一瞬の隙をつくと、一気にその距離を詰めた。そして舞台隅まで追い込まれ体勢を立直そうと振り返った小椿くんに真っ直ぐに切っ先を向けた。








しん、と場内が静まり返る。











『ま、参った…。俺の負けだ』



両手を上げて負けを認めた男の声とほぼ同時に、今日一番の歓声が一際大きく会場を包んだ。









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