『おい、カヤ。うるせーぞ』


『朝っぱらから元気なヤツやな』


『ご、ごめんなさい…』



羅武と真子がこちらを見て笑っていた。こっそり覗き見た真子と目が合えば、くい、と意味ありげに持ち上がる口角。昨日の夜の記憶が甦り、余計な羞恥心が更に身体の芯を熱くさせた。


とにかく周りの視線から逃れるように、ただひたすら俯いていた。







『嘘や』


『は?』


『どこにも付いとらんよ、跡』


『な…、』



空いた口が塞がらないとはまさにこのことで。そこまでして聞き出そうとするリサの執念にも呆れたけれど、何よりそんな子供騙しにあっさりと引っ掛かってしまった自分にも驚いた。






『あたしを騙そうなんて一億年早いわ』


『もう。リサ、いい加減に…』





その時だった。
周囲の空気がそれまでとは明らかに異なったものになる。





『来たみたいだぜ、じいさん』



拳西の言葉に各々が自隊の定位置へと散らばっていく。






『急な呼び出しなんて穏やかじゃないねぇ。何かあったのかい、山じい』



しんと静まり返った中で、待ち兼ねていたように京楽隊長が口を開いた。





『今朝皆に集まってもらったのは他でもない。兼ねてより提案のあった護廷十三隊対抗親善試合の開催が決定したことをここに報告する』



さすがの隊長達もにわかに騒つき始める。それも当然のことだ、護廷十三隊の長い歴史の中でそんなものが開催されたことはおろか、耳にしたことすら一度もなかった。





『決まっちゃったんだ?あれ』


『驚いたな、本当に許可が下りるとは思わなかったよ』


『なんじゃ、不満そうじゃの。春水、十四郎、発案者はお主らじゃろう』


『軽いノリのつもりだったんだけどなぁ』


『でも各隊の親交を深めるにはちょうどいい機会だよ』



京楽隊長や浮竹隊長が発案者ということは、各隊の隊長達には隊首会ですでに知らされていたことなのだろうか。





『どういうことなの?羅武』


『少し前から隊首会でも話題になってたんだよ。まさか本当に開催されるとは俺も思ってなかったけどな』



そうぼやきながら羅武は少しだけ面倒くさそうに頭を掻いた。





2010.10.27





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