『おはよう、カヤ』


『リサ、おはよ』



翌朝隊舎に着くなり各隊の隊長副隊長に召集がかかり羅武と共に一番隊隊舎へと出向くと、真っ先にリサが声をかけてきた。





『まだ全員集まってないね』


『緊急って訳でもなさそうやけど、朝からまったく迷惑な話や』


『リサ、そんなこと言って山本総隊長が来たらやばいって…』


『別にええやん、ただの爺さんや』



リサの吐く毒に冷や冷やしながら周囲を見渡せば、少し離れた場所で真子が羅武やローズと談笑していた。



さすがに日の高いうちから堂々と真子と歩く勇気はなくて、今朝はお互い時間差で部屋を出た。
真子はといえば、そんなん気にせんでもええやんか、って不満でいっぱいの様子だったけど。やっぱり立場上余計なことを考えてしまう。







『で、カヤ。昨日、真子とどうやった?』


『うん?別に何もないよ』



ほら、来た。
リサのことだ、どうせ昨日のことを興味津々で根掘り葉掘り聞いてくるに違いないと思っていた。





『昨日一緒に帰っとったやろ?』


『そうだけど、ただそれだけだよ』


『あたしのこと、騙せると思っとるの?』


『だって、ほんとに何でもないし』



いつものわたしならきっとここで挙動不審になって、さながら尋問ばりのこの追及から逃れることなんて出来なかったはずだ。





『…ふーん』


『ほ、ほんとだってば…』



それでもリサの疑いの眼差しから解放されることはなくて。眼鏡の奥で鋭く光る眼光はわたしの薄っぺらな嘘なんて簡単に見透かしているようだった。やっぱり相手はリサだ、いくら悪あがきしたところでわたしに勝ち目なんてある訳がなかった。





『ここ』



するといきなりリサはわたしの首筋にすっと指を立てた。



『え…?』


『跡。残っとるよ、くっきり』


『うそっ!!』



首を押えて思わず発っした大声で周りの隊長達が何事かと次々に振り返り、たちまち大注目を集めてしまった。






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