どれだけ甘い言葉を貰っても、どれだけ深く唇を重ねても、まだ足りない。もっと欲しい、そう思ってしまうわたしは、どこかおかしいのだろうか。
こんなにも積極的な自分を見たことがない。






『キス好きやねんなァ、カヤは』



真子を求める気持ちがやけに自分を積極的にさせた。首に腕を回して引き寄せれば、近付いた顔が意地悪くにたりと笑った。



そうして舌を絡めとられるぐらい深く口内を貪られる。必死に酸素を求めて開いた口もまた塞がれて。酸欠状態に陥りながら頭の中がぐらぐらと快楽に揺れ惑う。



ぐちゃり、結合した部分から響く厭らしい音が鮮明に鼓膜を震わせて、遠退いた意識が再び目を醒ます。





『真子だから…、真子のキスだから好き、なんだよ』


『どんだけでもくれたるわ、オマエだけのモンや』





少しずつ、でも確実に細胞が騒つき始めていた。今、繋がり合っているという紛れもない事実が更にそれに追い討ちをかける。





『あっ、あ…、しんっ…』


『カヤ』



こんな時だってきっと自分だけが余裕がなくて、そんなわたしを真子は楽しそうに上から眺めてるんだろう、そう思っていた。



けれど闇雲にしがみついた胸の中心、そこから聞こえてきたのは、そんな自分と同じくらい早く脈打つ彼の鼓動で。
ああ、この人も同じなんだ、そう思うと幾らか安心した。







『はっ…、ん、んっ、』


『なァ、カヤ』


『な、に……?』



すでに枯れ果ててしまった声をなんとか振り絞り、焦点の定まらない視線を向ける。
その瞬間に一番敏感な部分を突かれて、じわじわと襲ってくる快楽に耐えようと堅く瞼を閉じた。





『あんな、』


『だか、らっ…、なに…』



確実に高みへと近付いている、震える全身がそう悲鳴をあげ下腹部にぎゅっと力が入る。
顔に纏わりついた髪を掻き分けられて弱弱しく見つめ返せば、ほんの一瞬だけ真子の表情がふっと緩んだ。











『めっちゃ好きや』


『っ、あ…』







済まんな、
きっともう一生離されへんわ。










全く本当に―――。



この状況で愛を囁かれたところでまともに受け答え出来る訳ないじゃない。



朦朧とする意識の中で真子の声がはるか遠くで響いている。
ゆっくりと白んだ世界に沈んでいく中で、これ以上ないぐらいの甘い甘い囁きと吐き出される熱にびりびりと全身が打ち震えた。





2010.10.17






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