重なり合う息遣いも、心臓の音さえ聞こえてしまいそうな、こんな近い距離で見つめられたら。溢れる感情が行き場をなくしてたまらなく苦しくなる。





『ちょ…、待っ…』


『カヤが嫌や言うんなら止める、オマエが決めえや。その代わり、』





何も言わへんのやったら、もう止められる気がせえへんわ。



頭の中に直接響いてくるような切ない声に瞼を堅く閉じたなら、熱くて痺れるようなキスが降ってきた。





『ん、…しん、じっ、』



大好きな人の甘い感触に酔わされながら何度も何度も、しつこいぐらいに名前を呼んでみても。それでもまだ満足出来なかった。
この人をもっと感じていたい、彼の後頭部へと手を回し、自分のほうからも何度となくぎこちないキスをおくった。






『カヤ』



名前を呼ばれて恐る恐る瞼を開ければ、視界を覆う黄金色に目が眩む。吸い寄せられるように伸ばしたお風呂上がりの彼の髪は、まだ少し水分を含んでいた。





『…真子、』


『何や』





好き、
本当に。





本当は言葉なんかじゃとても言い表せないぐらい、わたしの中でそれぐらいあなたの存在が大きくなってる。






『どうしよう…』


『まさかこの期に及んでやっぱ無理とか言わへんよな?』


『今までこんなに緊張したことなかった…』



こんなわたしでもこれまでに真子以外の男の人と付き合ったことは何度かある。だからこそ人並みの経験はそこそこある訳で。
それなのに今の緊張感といったら尋常ではなかった。





『何やそんなことかいな』



頬に重なった手が逸らした視線をゆっくりと正面へと引き戻す。
一瞬垣間見たすっと目を細める彼の表情は、瞬きすら勿体無いと思えるぐらい綺麗だった。





『せやけどアレやな。オマエが他の男に抱かれとったて考えたら無償に腹立ってきたわ』


『そ、そんなのお互い様じゃない…。自分だって他の女の子と付き合ってたくせに』


『でもまァそんだけ緊張するっちゅーことは、ようするに好きで仕方ないんやろ?俺のことが』



どんだけ自信過剰なのと、いつもならさらりとかわしてやる所なのに、そんな気力はすでに持ち合わせていなかった。








『…あ、あっ、』


『お、ええ声。この口がちょっと前まで生意気なことばっか言っとったとは到底思えへんわ』



中途半端にはだけた互いの寝間着が、もどかしさと共に淫らな感情まで一緒に連れてくる。滑らかに身体を撫でる掌はもどかしいぐらいに繊細で。駆け抜けるびりびりとした刺激に思わず背中が浮き上がった。



前に突き出た胸の先端を器用に這う舌先も、いつの間にか中へと滑り込んできて内側を巧みに擦る指先も。
その全てが少しずつ、けれど確実にわたしの身体を虜にしていく。





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