ローズの案内で連れてこられた場所にはすでに多くの見物客が集まっていた。





『メインイベントって打ち上げ花火のことだったんだね』


『そうだよ、絶好のポイントを押えておいたからね』



得意気に示されたその場所は、混みあった人混みから少し離れたひっそりとした土手の上。用意周到にしっかり蓙まで引かれているあたりさすがローズだ。





『ローズ、あんたもたまには役に立つやないの』


『さ、呑むでェ!』



花火には全く興味のないらしいひよ里とリサは、とっとと酒盛りの準備をし始めた。





『ほんならボクはカヤちゃんの隣に、』


『ちょっと待った。お前は俺らの隣だ、ギン』


『えー、ボクおっさんの隣なんて嫌やー』


『たまには僕達と仲良くしようよ』



強引に羅武とローズの間に座らされ完全に身動きのとれなくなったギンは少し不服そうで。


そんな様子を見ていたわたしに向かって羅武が親指を立てた。それはまるで、真子と上手くやれよと言いたげに。






『カヤ、座ろうや』


『あ、うん』



わたしは真子と一緒に蓙の一番端っこに腰を下ろした。





『ねー、花火まだぁ?』


『あんまりはしゃぎ過ぎて迷子になっても知らねーからな、白』


『拳西ばっかでー。あたしの心配より自分の心配したら?』


『何だと、コラ…』


『お、始まったみたいやで』








真子の声とほぼ同時に大きな音がして、一筋の光の玉がゆらりゆらり漆黒の夜空へと駆け登っていく。





はしゃいでいた白もそれを止めようと立ち上がった拳西も。
羅武とローズ、その二人の間で逃げ出そうと必死に藻掻くギンも。それから花より団子と言わんばかりにお酒に夢中になっていたひよ里とリサも。



そしてわたしの隣で同じ空を見上げている真子も。





皆、ほんの数秒間だけ頭上に咲く大輪の華に心を奪われた。








『…綺麗、だね』


『そうやな』


『ね、真子』


『何や?』


『わたし、すごい幸せかも』



少しびっくりしたように真子がこちらを見つめる。実際こんな臭い台詞を簡単に口にするなんて自分でも予想外だった。
きっとこの幻想的な雰囲気が少しだけ自分を素直にしてくれているのかもしれない。






『こんなに近くに真子がいて、皆がいて。その中にいられるって絶対幸せ者だよ』


『そんなんここにおる皆かて同じや』



ここに集まっとるヤツ皆、カヤと一緒におれることが嬉しいからこうやって側におるんやんけ。










『あー、ちょっとちゃうな』


『え?』


『特に俺が、やな』





くいっと持ち上がる緩い口角と、彷徨うわたしの視線を捕えて離さない真っ直ぐな瞳。







『きっと俺が一番幸せモンや』


『…ばか』


『何でやねん』





ちょうど打ち上げ花火が途切れたときで良かった。恥ずかしくて真子の顔を直視することが出来なかったから。
暗闇と一時の静けさの中、そっと安堵の溜め息を漏らした。





2010.09.11






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