鬼が豆鉄砲を喰らう
「お、おい!怒ってんのか?!一ヶ月も連絡しねーで怒ってんのか?!」
「え?別に?怒ってはいないけど?」
「そ、そうか。そうだよな。お前は俺の仕事も理解してくれて…」
「だって十四郎とはもう恋仲じゃないし。怒る必要なんてないじゃない。馬鹿だなー十四郎は」
「………へ?」
あ、本日二度目の鬼の豆鉄砲の顔だ。
「何勘違いしてるか知らないけど、十四郎がまともに連絡くれなかったのはこの一ヶ月間じゃないよ?六ヶ月間。六ヶ月間はまともに連絡くれてないし、会ってもいない」
「…………え゛、」
「流石に六ヶ月も連絡無しだったから自然消滅って事でいいのかなって。?いいよね十四郎?」
にっこりと笑う彼女の顔は言葉通り全く怒っておらず、怒るどころか何処か清々しそうだ。
完全にフリーズした俺の脳みそは暫く機能を停止した。停止したはずなのに、やけに頭の中で自然消滅という言葉が復唱される。「おーい、大串くん?でーじょうぶかー?」なんて万事屋が目の前で手を振ってるが上手く反応出来ねぇ。つーか何でこいつまゆと一緒にいんだよ。もしやあれか?俺の居ぬ間にこの野郎がまゆと…?
かしゃーん、と叩き出した最悪な結論に土方は無言で抜刀すると、銀時の首筋にぴたりと刃を這わせた。
あの完全フリーズした状態からまさか抜刀すると思っていなかった銀時は「あ…ヤバ?」と冷や汗を流すとダラリと伸びた前髪で隠れた土方の目を見た。
「…やる、」
「え?」
「ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「えええぇぇぇえ!?何でぇぇぇぇぇ!!?」
首に這わされた刀がブンと上に上がる。振りかぶって…振り下ろす!という瞬間だった。まゆが「いい加減にしなさい十四郎!!」と今日初めて怒った声を上げた。
「見苦しすぎ!!自業自得でしょ?!銀時に当たるなんて筋違いよ!!」
「あ゛?!」
目が血走り自分相手にドスを効かせてくる土方に、まゆは情けなさそうにため息をつくと、ゆっくりと土方に近づいた。
そして「私の事、好きなの?」とさして興味もなさそうな表情で聞いてきた。
「も、もちろん、」
「そ。ならその気持ち忘れないで?」
その単語に、許してくれるのか?と土方の表情が一瞬明るくなりそうになった。
が、なる前にトドメが刺されたのだ。
「次、新しい人と付き合う事になったら、同じ間違いをしないようにね」
とロンギヌスの槍の如く、土方の胸を貫いたのだ。
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