『は?手作り?』


ちょっと不思議そうにそのジョウロの中を覗く摩由に山崎が中身の説明を始めた



「バナナの皮には薔薇に必要な栄養素が沢山入ってるのはご存じですか?これはそのバナナとコーヒーをミキサーにかけた物です」



つらつらと婆ちゃんの知恵袋的な事を述べる優男に摩由は『ほ〜』と感心しながらマジマジとその中身をみた



『バナナか、でもよくそんなにあったな』


「局長が食べますからね〜」


『あぁ、奴の主食か』


「摩由さん、そんな事局長の前でいったら泣きますよι」


「ったく、何を台所でせっせと作ってるかと思って寄ってみた俺まで巻き込みやがって」



「沖田隊長が来るって言ったんじゃないですか!バナナの甘い匂いに誘われてナメクジが来たら捕まえて副長の服の中に入れるとかなんとかいって」



それに自分がターゲットではないにしろ、そんな光景を想像して若干摩由の顔色が青ざめる



とんでも無い事を考えてるな・・・ι




「良いアイディアだろィ、色もニュルッとした感じもなんかマヨネーズに似てるし、喜ぶんじゃねェの?土方の野郎も。俺ァ上司思いの部下ですからねィ、土方コノヤローの喜ぶことは何でもしてやりてぇんですよ」





絶対嘘だろ




ニタニタと目を輝かせて説明をする沖田に摩由と山崎は冷たい視線を送った




「どうでも良いですけど、ナメクジは来ませんって、コーヒーも入れてあるんですから」



そういう山崎に沖田は心から残念そうな顔をしたが


「じゃぁ作戦を変えて服の中にセミをぎっしりいれてやろー」


と言って鼻歌を歌いだした




いや、セミなんか煩くて着る前にばれるんじゃないか??





沖田の感覚が分からんな、と思いながら摩由は吸っていた煙草を携帯灰皿に捨てた





『それにしても山崎、お前は薔薇を育てるのはプロだな、お前が手入れした薔薇は美味い』



ポロっと吐いた言葉に山崎と沖田が「へ?」と言う顔をした
それがあまりに間抜け面で思わずこっちまで『へ?』と間抜け面がうつってしまう



「え、えーっと、"美味い"???」


『・・・・あ、・・・いや、その』


「摩由さん、薔薇食うんですかィ?」



『ふ、普通食べるだろ?ほ、ほら!薔薇ジャムとか、薔薇の砂糖漬けとか!』



「あぁ、そうですね、確かにそうやって食べる人もいますよね」


「何でェ、俺ァそのままむしゃむしゃ食うのかと思いやした」


「まァ今は生で食べれるサラダ用の花もありますけど・・・これは食べれませんからね?沖田隊長くれぐれもそのまま食おうとなんかしないで下さいよ?」


「あぁ?テメーナメクジ生で食わしてやろうか?」


「ヒィィィィ!!!いりませんよォォォォ!!!」



薔薇を食べる話からナメクジの踊り食いに話しが代わり、摩由は2人にばれない様にホッと胸を撫で下ろした





ばれる訳にはいかないんだったな・・・・・





バナナの栄養剤を山崎の体にかけようと走りまわっている沖田の姿を眺めながら、摩由はおもむろに薔薇の花弁一枚だけ引きちぎると、それに優しく口付けをした



優しく愛おしむ様に、残酷な口付けを








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