舞いあがって行った花弁を目で追っていくと少し向こうからこちらの方に歩いてくる山崎と沖田の姿が見えた


2人の手には何かが持たれている



摩由は次の薔薇を折ろうとしていた手を止めて彼らの方へ体を向けた




「あ、摩由さんもいらしてたんですか!」



『あぁ、山崎のお陰で良い薔薇園になったな』



「えへ、そうですか?」


「何頬染めてやがんだ、気持ちわりー」


「う、煩いですよ!この真撰組で俺を褒めてくれるのは摩由さんだけなんですから!!」


『だが、仕事関係では褒めた事がないな』


「うっ・・・・」


「だってよ山崎、お前は監察よりも薔薇の観察の方が性に合ってるんじゃねェですかィ?」


「うるせー!!俺だって必死に仕事してんだァァァァ!!!」





少し涙目になりながら珍しく沖田に噛みついた山崎

でもすぐに沖田のブラックスマイルに気が付き顔を青くして「すいませんでしたァ!!」と頭を下げた




「謝るぐらいなら最初っから従順でいなせェ、とにかく、俺ァ今ものっそい傷ついたから土方を殺して来いよ」


「意味わかんないんですけどι」



「俺の傷心を土方の死で癒せって言ってんでィ」



「そんな事出来る訳ないじゃないですか、副長に手を出したら俺が傷だらけですよ、体も心もズタボロにされますよ」


「なら夜勤代わりなせェ、俺は傷ついた心を慰めるのに休暇が必要でさァ」


「毎日のようにサボってる人間が何言ってんだよ」





こいつ等何しに来たんだ?




そう思いながら2人の言い合いを止める訳でもなく摩由は煙草に火を付けると呆れた目でその様子を伺った

そして山崎と沖田が持っている物に気が付く

見れば何やら茶色く濁った水の様な物を瓶に入れて持っていた





・・・・なんだありゃ?





それぞれ1つづつ持っているその不思議な液体に思わず目が行く

その摩由の視線に気がついた山崎が「あ、」と言ってその瓶の蓋を外し始めた



『山崎、それは何だ?』



沖田との言い合いを一旦止め、ドボドボとジョウロにその液体を入れて行く

山崎は自分の瓶の中身を全て入れ終わると摩由の顔を見上げてニッと笑った



「手作りの栄養剤です」






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