『これで平隊士は終わりか・・・・』



結局一番隊から十番隊までの隊士らすべてを彼女が相手をした
彼女のまわりでは伸びて倒れている隊士らの姿
もちろん摩由の体には傷一つ出来てはいなかった
総勢100名以上の人数を一人で相手し、その全てに勝ったのだ
その事に心配して見ていた土方を始め隊長格の連中は口をあんぐり開けて見いってしまった

流れるように攻撃をかわし
目にも止まらぬ速さで攻撃をくり出し
的確に相手の急所を攻撃していく
そしてその口元には常に笑みを浮かべていた


楽しんでやがる


全員がそう感じた


『さて、残るは隊長クラスか・・・』


少し乱れた隊服を整えながら二番隊から十番隊の隊長を見る
そしてクイクイと軽く手招きをした

やられる訳にはいかねェ

誰しもがそう思い立ち上がる
そこに先程壁に叩きつけられた沖田も参加しようとして近藤に止められた


「総悟、お前はまだ休んでおけ」

「けど・・・・」

「そうだ、そもそも俺とお前は昨日で実力が分かったって言ってたしな、今出て行って参戦する必要はねェだろう」

「なら、なんで土方さんは刀の鍔に手をかけてるんでィ」

「・・・・・・・」

「俺も・・・最悪の場合は出ますぜ」

「・・・・分かった」



隊長格が摩由を取り囲んだ
そして囲む様に鋭い刃が摩由につきつけられる


『流石隊長格にもなると気迫が少しは違うようだな』


くつくつと笑いながら楽しそうにそう言うと摩由はスッと雰囲気を変えた
そして


『では、始めよう』

と言って床を蹴りあげた


刀 対 素手

圧倒的にそれは刀を構える方が有利ではある筈なのに、隊長らはあっと言う間に劣勢に回った

六番隊の井上が隙をついて摩由の突きを繰り出した時、彼女は素早く身を翻すと井上の手元を叩きつけた

ガシャンと落ちる刀

ソレを素早く拾いあげると摩由は井上の右首に思い切り蹴りをかましその体を倒した

そして意識が朦朧としている彼の額目掛け刃を突き刺そうとした

が、

それは十番隊隊長の原田によって弾かれる
そのまま弾かれる力に身を任せくるりと体を反転させると、後ろに構えていた二番隊隊長の永倉の脇腹を彼女の刀が掠めた
道着を切り、少しばかし血が溢れだす

『おや、惜しかったな』

そう言うと背後から振りかぶってきた原田の刀を軽々と弾く。そしてそのまま首元にピタリと刃先を当てた

全員の動きが止まる

原田の喉がごくりとなったのが道場に響いた

『お終いだな』

ニタリと笑い掴んでいた柄にキュッと力を入れた時だった


キィィィン!!と原田の喉に押し当てられていた刀が吹っ飛ばされた
その事に目を丸くして相手を見れば、土方の姿
その姿に摩由は額に手を当てると小さく溜息を吐いた


『・・・土方・・・貴様は参加せずとも良いと言った筈だ』


「・・そう言うなよ、俺にも殺らせろってんだ」


最後の言葉を発するのと同時に土方の刃が摩由の腹を横切る
しかしそれを軽く後方に跳躍しながら交わすと摩由は仕方ない、と言うように懐からある物を取り出した
その出した物に一同眉を顰めた


なんだありゃ


懐から取り出したのは刀では無い
短刀でも、そう言った類の物ではなかった





総鉄扇
それは全てが鉄でできた扇子


あんなもので戦うと言うのか?



土方がそれに一瞬目を奪われた
その隙をついて摩由が瞬時に懐に入ってくる
そして刀を持っていた手の間にその総鉄扇を引っ掛けると、くるりと体勢を反転させ、背負い投げの様な要領で土方を床に叩きつけた


『ぼさっとしているからだ。これに目を奪われたか?』


仰向けで倒れた土方の目の前で総鉄扇を広げパタパタと顔を仰いだ



『武器は刀とは限らん、私の獲物はこれだ。だが甘く見るなよ?その気になれば肉だって断ってしまえるぞ』


ニタリと口元が笑ったかと思うと、摩由は土方の顔面目掛けて鉄扇を振りおろしてきた
慌てて体を左へ転がし起き上がる
ドォォォン!!と言う音と共に、今土方が倒れていた場所は見事に陥没していた



もしあのままだったら、頭が粉砕してただろ?!


少しぞっとしながらその風景を見る



『では再開しようか、全員掛かって来い』



バッと扇を広げて口元を隠す様な仕草をする
胴もガラ空き、隙ありまくりな体勢
それに一斉に隊長たちが斬りかかっていった







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