▼来年こそは(太子+閻魔)
09/03 11:20(0

※学パロで太子と閻魔が双子設定









かりかりかりかり、
紙と芯がこすれる音。
そして、たまには。

ごしごし、
消しゴムが力強く酷使されて、熱をもったり、

ペラリ。
ノートや教科書、プリントの束がめくられたり、

ポタリ。
汗が頬や髪をつたって下に落ちたり、

そして、ごく稀に、

ぐしゃり。
八つ当たりで、にぎり潰された紙の「理不尽だ!」という悲鳴。


壁にかけられた、まん丸な時計の短い針は12を追い抜いた、そんな熱帯夜。
畳にちゃぶ台という質素な部屋で、扇風機が低く音をたてながら、異様な熱気をかき混ぜている。
そして、その部屋で二人の男子高校生が、壮絶な戦いを繰り広げていた。
といっても、見ての通り喧嘩しているわけではない。

夏休み最後の日がすぎた、夜か朝かわからない時間。
机や、その周りに並べられた、「数学」「英語」等の文字や、原稿用紙と本が数冊。
時間は刻々と、残酷に進んでいく。
こう言うと、二人がなぜ必死なのか、お察しいただけるだろう。
素肌に青いジャージをきて、腕と足のそでをまくっていた男は、とうとう叫びながら泣き出してしまった。
「もう嫌だ!! 数学なんてやめてやるよ!!」
すると、立ち上がり、数学の教科書をわっしとつかみ、畳にたたきつけた。
そして、教科書のすきまに挟まっていたのであろう大きなケシカスが、わらわらともう一人に襲いかかった。
「ちょ、ケシカス! かかったじゃないか!」
叫んだ男――前髪を一房だけたらし、黒いパーカーの袖をまくっている男は、閻魔という。
しかし、抗議をする閻魔に気が付かない位に、太子の気持ちは先へ先へと進んでいく。
「提出日は今日! えーと、英語のワークに、数学の問題集に…それから、それから、」
あわあわと指を折っていくが、途中から現実の残酷さを垣間見てしまい、挫折してしまった。
ついでにがくりと足も折れ、畳を涙や鼻水や汗で濡らした。汚い。
そんな太子を、閻魔はじっとりとした目(暑さからか、苛立ちからかであろう)で見、おもむろにケータイを手にとった。
「あ! サボるのか! このイカ!」
「うるさい! ほんの息抜きだよ!」
「こんの〜閻魔だけずるいぞ!」

丸い時計の短い針は、ゆっくりと、しかし確実に進んでいた。

「…あれ?」
ゆっくりと、ゆっくりと。
「どうした、閻魔。」
そう問うと、閻魔の只でさえ白い顔が、更に白くなっていった。
そして、ケータイと丸い時計を何度も見比べた。
「…太子。かなりヤバいよ。」
「…なにが。」
太子は嫌な予感が胸の中で暴れまわっていたが、聞かずにはいられなかった。
「これ、見て。」
閻魔は、ケータイの画面を太子にずい、と差し出した。
06:25
そして、丸い時計があらわすのは、
04:02
時計は遅すぎるくらいのスピードで、たまに止まりながら進んでいた。

「…こんなに時間が経って。私達の集中力、すごいな。」
「言ってる場合じゃないよ! 丸時計壊れてたんだよ! ヤバいよ、もう家出ないと!」
現実逃避をした太子を、閻魔の叫びが太子を引き戻した。
「終わってない宿題、まだあるでおま!」
太子のその言葉が、閻魔の現実を見るピントをあわせた。
「ヒィー!どどどどうしよう、遅刻するうえに宿題未提出なんて、」
そこに、太子がボソリと
「馬子キッス…。」
言った途端に、閻魔は号泣しながら頭を抱えた。
「ウワアアア!!絶対遅刻したら駄目だ!さっさと着替えて!」

あわてて着替え、他の学生より幾分かは軽いカバンを肩にかけ、朝ご飯も食べずに、近所迷惑な騒音をたて、出て行った。
彼らの新学期が始まった。



「ごめんなさい、ほんとにごめんなさい…はい、ちょっと遊びすぎたっていうか…はい…。」

来年こそは、計画的にやります。




――――――――――
私の来年こそは本当に信用できない




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