怪盗パロディ
「後3分で予告時間やな…」
時計を見ながら険しい顔で呟く。周りの刑事達にも緊張が走る。
「いやん、ウチめっさ怖いわぁ」
「大丈夫やで小春、俺が命に賭けても守るさかい」
「ユウ君…」
「小春…」
……緊張が走る。
「なんや有名な怪盗だか泥棒だか知らんけど、浪速のスピードスターには適わんっちゅう話や」
「先輩足震えてるっスよ、ビビってるのバレバレッスわー」
……緊張が、
「わいもう嫌やじっとしてられへん!!なあ千歳ー、怪盗さんまだ来ぉへんの?」
「まちっとばってん、頑張るばい金ちゃん」
「お前ら少しは緊張しろやっ!!」
ボーン、ボーン、ボーン
「時間や時間や!!」
緊張もくそもあったもんやないコイツらに、気を引き締めろと言うのがそもそもの間違いやった。
カチッ
次の瞬間、部屋の証明が消えた。暗闇に目が慣れないせいか辺りは闇以外に判るものがない。周りの奴らも騒ぎ出す。
「キャー!!」
「大丈夫かー!?小春ぅー!!」
「あ!!怪盗さんお宝取ってったで!!」
千歳の横で跳ねてるらしい金ちゃんが、大きな声で叫ぶ。この暗闇でハッキリ見えるなんて、ほんまどんな身体能力しとんねん。化け物か。
でもまぁ、おかげで対処できるけど。
「ナイスやでぇ金ちゃん!!」
俺は持っていた手錠を、怪盗がいるであろう方向に投げつけた。こんなこともあろうかと、予め手錠には紐をくくりつけとる。流石聖書と呼ばれる俺や。
ガシャンッ
手錠がかかる音が聞こえた。紐には相手の重みが伝わってくる。よっし、ドンピシャや!!
「ん〜絶頂〜!!」
「キャアァッ!?」
勢いよく紐を引くと、怪盗が俺目掛けて引っ張られる。ようやく目が暗闇に慣れてきた。
ドサッ
俺にぶつかった怪盗を逃がさないようにしっかりと押さえる。意外にも怪盗は軽く華奢な線をしていた。掴んだ手に柔らかい感触が伝う。
あれ、……もしかして…
パッ
その時、部屋の電気が点いて辺りが鮮明になる。廊下から銀や小石川が走って来るのを見ると、二人が電気を点けたようだ。
そして、俺の目の前で捕まっていたのは、顔を真っ赤にして俺を睨みつける眼鏡の女の子だった。
そして、俺の手が掴んでいたのは、その子の胸……
「あ」
「こぉんの…変態っ!!」
パシィンッ
いつの間にか手錠を外した彼女は、俺に張り手をキメて、夜の闇へと消えていった。