幼なじみの涼太がモデルになったと聞いたときは爆笑したものだが、今となれば確かにあいつ顔だけは妙に綺麗だしまあ当然かなと思った。そんな涼太に女子が群がるのも予想はしていたから別段驚きはしない。ただいい加減毎回毎回取り巻きを連れて私のところへやってくるのがうるさくて適わない。だからヤツに言ってやったのが、こう。

「あのね涼太、私この間彼氏できたから今後は必要最低限話しかけないでね」

その時の涼太の顔といったら傑作だった。私の言葉が嘘だということはすぐにバレるだろうと踏んでいたのだが、涼太は思いのほかあっさりと信じたのだ。数秒固まった後で、手首を掴まれる。

「えっ誰、誰っスか」
「誰だっていいでしょ」
「名前は」
「教えたくない」

そもそも彼氏なんていない、と言う気にもならなかった。何だかちょっと面白いしこれで涼太が話しかけてこなくなれば私も清々しい毎日を送れるからだ。そう思いながら涼太の質問攻めをことごとく無視する。するととうとう涼太は私の手首を握る力をぐっと強めていつもより低い声色で言った。

「誰だよ」

涼太がキレると何かと面倒だ。ここでネタばらしをすると更にキレられそうなので仕方なく適当に思い付いた隣の席の男の名前を紡いでみる。

「赤司くん」

瞬間、手がぱっと解放されて安心する。無事だった手首を撫でながらふと涼太を見上げると、驚いたような悲しいような目と目が合って思わずぎょっとする。

「涼太?」
「い、いつから」
「え?えっと…先週」

適当だ。

「どっちから」
「…私から。隣の席でずっと好きだったんだよね」
「………」
「あの人ああ見えて結構嫉妬深いから、涼太も今日からあんまり話しかけないようにして」

これ以上嘘をつくのもさすがに心苦しくて半ば強制的に話を終わらせる。でもこれですっきりした。幼なじみではあるが最近の涼太は馴れ馴れしいのだ。取り巻きの女たちから妬まれるのなんてごめんである。
それじゃあねと挨拶もそこそこに踵を返すと、その先に赤司くんが通りかかるのを見た。やばいと思う間もなく、涼太が赤司くんを呼んでいた。涼太てめえ。

「赤司、っち!本当なんスか!」
「黄瀬…。何の話だ?」
「だから、なまえと付き合ってるって話、」

まずい。これは確実にバラされる、と観念する。そして何より巻き込んでしまった赤司くんに申し訳ない。二人を諦観していると赤司くんがきょとんとした目を私に向けた。ああごめんなさい赤司くん。ひきつった笑みを返すと何をどう解釈したのか赤司くんはふっと穏やかな微笑みを浮かべると言った。

「ああ、そうだよ」

どんどんややこしくなっていく。
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