オアシスのオアってどういう意味なんだろうね。orかな?オールオアナッシングのオア?つまりオアシスってor死す…!?
怖っ!やばいすごい事実に気付いちゃった!死か、または…って意味じゃん!!または何なんだ!?きになるわ!!

「おまえ、それ以上暴れたら落とすぞ」
「ごめん赤司…でももう限界で。喉乾いた」
「まぁ…一理ある」

そりゃそうだよね、砂漠を馬に乗って進むこと早数十分だもん。この馬もよくやってくれてるよ。最初は馬キモッ!とかって思ってたけどごめんね。可愛いよ。私動物に乗ったことあんまり無かったからさ。おじいちゃん家のラブラドール犬以来だよ。元気かな。
それにしても砂漠って本当に広いね。このままどこにも着かなかったらどうしよう?砂漠でのたれ死になんて嫌だなぁ。

「水って大事なんだね…。私泳げないからプールも海も枯れろって思ってたけど間違ってたよ…」
「おまえ本当に自己中だね」
「お腹痛くなったときに世界滅びろって呟いてた赤司よりはまだマシだよ!」

海と世界じゃ天と地ほどの差があるからね。
ってあんまり喋らせないでくれるかなぁ。ただでさえ喉がカラッカラなのに!
「話し始めたのはお前だよお前…」
まあまあ。
………って。

「あっ!?ちょっと!見て!あれ人じゃない!?」

なんか遠くてよく見えないけど!あれ絶対人だよ!頭と手と足があって二足歩行だから。
砂漠の中に一滴の水とはこのこと!希望が見えた。
やったー神は私たちを見放さなかった!生きれる!生きれるぞーっ!
とりあえずあの人にお水とご飯をもらって、宿代を貸してもらおう!それで私たちもう安泰だよ。やっていけるよ。
感動のあまり涙が零れちゃう。ああ、こんなに清らかな涙久し振りに流した。

「ねぇ聞いてる赤司!?人がいるよ!」
「ヤモリじゃないか?」
「ちっっげーよ!ちゃんと見て!あっち!」

ぐりん、と赤司の頭を回す。やっとその人を視界に収めた赤司はああ、と声を漏らした。
薄い反応だなぁ。これだからボンボンは!赤司は絶対リアクション芸人にはなれないね。うんうん。

「じゃあ、ちょっくら私が色仕掛けで落としてくるから!」
「バッカおま、敵だったらどうする」
「え?大丈夫大丈夫!」

赤司はどうもさっきの一件で人間不信になっているようだね。ほら、赤司って警戒心強いから。私も出会いたてのころは怖い視線をザクザク刺されたものだよ。まあ今もそれほど変わってないけどね!あっはは!
それはそうと大きい人だなあ。背という意味でもあるけど何より筋肉だよ。背が高い人は周りに溢れんばかりにいたから見慣れてるけど、こんなにムキムキな人は初めてだ。

「こんにちはお兄さん!」

声をかけると、切れ長の瞳が私に向いた。私の中でイケメン=笠松さんって固定したイメージがあるんだけどこの人もなかなかのイケメンだよ。すごい筋肉だけど。後、髪もね。私赤司以外でこんなに赤い髪の毛してる人初めて見た。
おっと、ついついじっと見つめてしまった。怪訝そうなお兄さんにひとつ、お色気たっぷりなウインクを飛ばしてから。

「あの…私たち…ちょっと道に迷ってるんです…。さっきも奴隷商人に捕まって…なんとか逃げ帰ってきたのはいいけど…あるのは馬だけ…お金もこの間自販機で返ってきてポケットに入れっぱなしだったお釣りの380円…」
「自販機といえばポンコツお前オレが貸した120円いい加減返してくれるかな」
「……………」

せっかく忘れたと思ってたのにこんなところで思い出すなんて赤司のやつ…。というかボンボンなんだから小銭の120円やそこらでケチケチしないでほしい。でもそういえば私も青峰に貸した390円返してもらってないような…。
いや、今はそれどころじゃなかった。なんかほらもう、お兄さんからもう帰っていいですか、なオーラが出てるから。
こんなのだめだよ。気を取り直して。

「そういったわけで…どうか、街につくまででも良いのです!街に行ってお料理をご馳走してくださるまでで構いません…。どうかお助けを!」
「清々しいまでに図々しいなポンコツ」
「お願いします!えっと…お名前は?」
「…………マスルール」
「まさるさん!お願いします!」
「誰だよ」

まさるさんは私のお色気、というか必死すぎる様子に心を打たれたのか数秒思考した後、まぁ…いいスけど、と快諾してくれた。やったぁ。
下げていた頭を上げ、まさるさんの手を握る。私にとっての神とはきっとこの人だったのだわ!ひとしきりまさるさんの手をぶんぶん振り回してから離す。お礼と言ってはなんだけどポケットに入ってた百円玉を渡した。そして私の全財産は280円になった。そもそもこの世界でこのお金が使えるのか分からないんだけど!

「…とりあえず、この先にバルバッドっていう国があるんで」
「ケツバット?」
「お前もう黙ってろ」

赤司の目がマジだった。怖かったので黙ろう。命は大切に!
まさるさんの後に続いて砂漠を歩く。ああ、なんだか本当に心強い。小二のころ学校で迷子になったことあったんだけど、その時助けてくれた四年生の宮地さんぐらいに心強い。思えばあれが初恋だった…。そんな時期もあったというのに今や馬で砂漠を越えるという…。って、あれ?
「そういえば赤司、馬はどうしたの?」
「手を離したら逃げていった」
「ああ…ボンボンの馬使いが荒いから」
「ポンコツが乗りながら暴れるから」

「…見えてきました」

そう言ったまさるさんの視線の先を追っていく。ずっと砂ばかり見ていたからか、目に映る緑が眩しい。
ああ、これぞ私の求めていた光景!生い茂る木々、並ぶ建物の数々…人の声、そして青々とした海!なんて素晴らしいの!
感動に突き動かされるまま赤司に握手を求めてからまさるさんを拝んだ。は〜…素敵。でもこうして見ると、私たちがいた世界とは本当に異なっていることを実感せずにはいられない。

「はぁ〜…」
「間抜け面め」
「征ちゃん…なまえちゃんはプチホームシックだよ」
「気色悪い。はしゃいだり沈んだり忙しい奴だね。お前それ修学旅行のときも言ってたよ」

修学旅行と世界を股に掛けたレベルのものを一緒にされても困るわ。
…でもまあ赤司も一緒だって事が不幸中の幸いってところかな。思えば修学旅行のプチホームシックのときも赤司を始め紫原たちとウノやってた。全敗したけど楽しかったなぁ。うんうん。罰ゲームで虹村先輩に膝カックンしたのは本当に死ぬかと思った。はあ〜あ。
…あれ、何の話してたんだっけ。
それにしてもいい国だな〜。

「赤司どうする、もうこの国に住む?」
「おまえいつも思ってたが立ち直り早いな」
「なに?」
「イヤ…住むのは良くないだろうね。どうやら治安は悪いみたいだ」

赤司が横に目をやった。それにならって視線を移してみる。路地裏の暗がりで、いかにもといった感じの輩が数人。凶器を片手に何か話してる。それに、今にも餓死しそうな人が影の中に何人か倒れていた。…うーん、なるほど。
壁に書いてある落書き、というか文字のようなものは読めないけどたぶん良いことではないのだと思う。どの世界でもこういう問題ってあるんだね。
複雑な気持ちに駆られつつよそ見をしていると、急に立ち止まったまさるさんにぶつかった。

「どうかしたんですかまさるさん」
「ホテルに着きました」
「ほっ、ほほほほラブホテル!!?」
「どこからラブが出てきた。聴覚もポンコツか」
「えっ…えぇええ!ちょ、ちょっと見て赤司!高級ホテルだよ!!」

ドーン!!つけるならまさしくそんな効果音だ。バルバッドの国に霞むことなく立派に建ったそのホテルに、思わず腰が抜けそうになった。
な、なにこれ!まさるさんってただ者じゃないとは思ってたけどこれは相当だよ!赤司もとんでもないボンボンだけどまさるさんもそれに負けず劣らずボンボンなんじゃない?うひゃあ〜…。
…何なんだろう、みんなしてボンボンって。

「マスルール!」

まさるさんを呼ぶ声。
高級ホテルから出てきたその人はまさに異国の人といった感じだ。誰だろう。まさるさんの知り合い?

「…その方たちは?」
「砂漠で助けを請われたんで…」
「…はい?」

目を点にする男の人に対して、まさるさんはあっけらかんとしている。やっぱりまさるさんって心強い。
よっしゃァ!力が湧いてきた!ここは私が行きますまさるさん!

「こんにちは私、なまえといいます!こっちは赤司。相方です。二人合わせて旅人です!」
「…………あ、はぁ」
「金が無いみたいス。宿代云々…」

思わず半目になるまさるさんの上司らしき人。いやだなぁ照れるじゃないですかぁ〜。テヘヘと笑みを返すと、上司さんはジトリとまさるさんに意味深な視線をやった。
警戒されてるのかな?まぁ世の中色々と物騒だからね。仕方ないよ。ふつうにテレビ見てて気付いたら奴隷にされかけるような世の中だもん。そりゃ怖くもなるわ。
上司さんの責めるような視線に堪えかねたまさるさんは思い出したように言った。

「奴隷商人に捕まって逃げてきたらしいんで…」
「…奴隷商人から?それは本当ですか?」
「はい!主に赤司が商人蹴り倒したり爆破させたりして逃げてきました!」
「それは…」

上司さんは感心するように私たちを見やった後、ふっとその表情を優しい笑みに変えた。

「大変だったでしょう。宿代ぐらいで良ければこちらからお出しします」
「…マ、マジですか!?」

まさか本当に宿代を出してくれるとは思ってなかった。
驚愕する私にうなずいてみせた上司さんはもはや天使か何かに見える。天使って実在したんだ…!
感極まって赤司に抱きつこうとしたら蹴られた。腹を。
お腹を押さえてうずくまりながらも、私はハッピーだった。やっとご飯にありつける!お風呂にも入れる!寝れる!
これ以上幸せなことってないよ。素晴らしい。

「ありがとうございます!あの、お礼と言っても私たちは何も持っていませんけど…何かお助けできることがあれば何でも!やります!」
「それは助かります。ああ、申し遅れました。私、ジャーファルと申します」
「じやはる…さん!ですね!」

変わった名前だな。
でもいい人!私は人の優しさというものに感動した!本当に捨てたもんじゃないよね。人間って偉大だよ。
じやはるさんに案内されるまま高級ホテルに足を踏み入れる。外装通り中も素敵だ。私こんなに綺麗なところに泊まるのって初めてだよ。修学旅行のとき泊まったところより断然綺麗!
赤司の家とどっこいどっこいかな!

…部屋に入ってみて確信した。
赤司の家よりすごいわ。

「う、うわー!!すごい!ベッドでかっ!!何これ!ゴージャス!!」
「はしゃぎすぎだ。ちなみにオレはこっちのベッドを使う」
「赤司も結構はしゃいでるよね!?まぁ、いいけど…私あっちのベッドで」

思いきりベッドにダイブする。
何という柔らかさ!これはさつきちゃんの胸にも匹敵するんじゃないかな!?相当だよ!こんなベッドで一夜を過ごせるなんて!じやはるさんとまさるさん様々だよ。
しかしあの二人って一体何者?ただのボンボンって感じじゃなさそうだよね。こんな高級ホテルに泊まってて、しかも私たちの分のお金まで出せるってとんでもないよ。今更だけど恐れ多いよ!

「どこかの国の使者かもしれないな」
「えぇ〜それはないでしょ。そんな遣唐使みたいに!聖徳赤司と小野なまえか!なんてね!」
「それは遣随使」

間違えた。

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