中学の同級生に会った。
彼は私の姿を見て、あっと小さく声を漏らした。私も歩いていた足を止め、彼を見る。偶然だ。中学を卒業したのは1ヶ月とちょっと前で、そこまで時間は経っていないはずなのに、彼の姿を見るのは久しい気がした。最後に見たときより、どことなく元気そうだ。良かった、と思いながら声をかけてみる。

「久し振り、黒子くん」
「久し振りです。みょうじさん」

黒子くんは、まだ真新しい高校の制服に身を包んでいた。高校の名前は忘れてしまったが、このあたりの学校なのだろうか。よく分からない。ふと黒子くんの手元を見てみると、そこにバスケットボールがあるのに気づく。バスケを続けているのだろうか。聞いてみようかと考えたが、気乗りはしないのでやめた。

「学校帰りですか?」
「ううん。バイト帰り」

私がそう言うと、黒子くんは少し驚いたようだった。バイトと言っても、特別お金に困っているわけではない。ただ何となく友達に勧められて、楽しそうという理由でやっている。それを伝えれば、黒子くんは納得したように私を見た。
家までの道は途中まで一緒なので、とりあえず黒子くんの隣を歩く。心なしか、背が伸びたように思う。

「マネージャーは、続けないんですね」
「え?あ、うん」

まさか、黒子くんからその話題を振ってくるとは思わなかった。頷いた私に、そうですかと返す。
黒子くんがどんな表情をしているのか気になったが、なんとなく私は赤い信号から視線を移せないでいた。

「黒子くんは続けるんだね」

ある時から姿を消した彼は、もうバスケは続けないものだと思っていた。だから少し意外だった。黒子くんがバスケットボールに視線を落とすのを見ながら、横断歩道を渡る。最近は日が長くなってきたほうだけど、さすがにこの時間になると薄暗い。今日の夕飯の予想を立ててみる。ハンバーグか、肉じゃががいい。でも、カレーになる確率が高い。

「キセキの世代を倒すと、決めました」

黒子くんは、固い意志のこもった声でそう言った。驚くことはない。そうかぁ、と思って納得した。

「頑張ってね」
「はい。みょうじさんも、バイト頑張ってください」
「うん」

そういえば、さつきは黒子くんに会っただろうか。きっと誰よりも黒子くんを心配していたであろう彼女を思い浮かべる。確か彼女と、その幼なじみは同じ高校だったはずだ。桐皇、だったかな。東京内だから、会うのに苦労はしないと思う。東京以外に進んだのは、紫原と赤司だと認識しているが、どうだろう。

「黄瀬くんは、神奈川ですよ」
「あれ、そうなんだ」
「はい。今度、練習試合に行きます」

じゃあ、東京に残っているのは青峰と緑間だけか。卒業の際に話をされた気がするが、曖昧だ。
黒子くんは、分かれ道を前にして立ち止まる。

「あ、えっと…それじゃあ僕、こっちなので」
「うん、またね。練習試合も頑張って」
「ありがとうございます」

一歩進んで、黒子くんに手を振った。思っていたよりも元気そうで良かった、と彼の後ろ姿を見つめて思った。

← 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -