赤司には幼なじみがいる。
あいつらって付き合ってんのかと思ってたが幼なじみなだけらしい。ホントかどうかはよく知らねーけど。
まぁとにかくなまえのこと奪ったらあの赤司も俺を恨まずにはいられないだろう。と、思ったことは数知れない、のだが。

「い、ったい!」

見ての通りなまえはバカだ。バカは大抵落としやすいものなんだがこいつの場合は違う。
屋上にて昼寝をしていたら突然何者かに足を踏まれた。先程の声と転んだ音を聞いて思わずげんなりした。踏まれた足を手で押さえながら起き上がるとすぐそこに女がぶっ倒れている。何してんだこいつは。

「おいなまえ」
「痛い…鼻折れた絶対…潰れた……」
「潰れてもそれほど変わんねえだろ」
「どういう意味!…って灰崎くん!」

今気付いたのかよ!顔を思いっきり歪めて鼻を押さえるなまえは俺を見るなり目をぱちりとさせた。女らしさの無い奴だな。
もう眠気は消え去っちまった。仕方なく屋上のコンクリートにあぐらを掻いてなまえを見る。つーかこいつ何しに来たんだ屋上に。転びに来たのか、わざわざ。そう尋ねるとなまえは制服についた汚れを払いながら口を開く。

「征十郎を探しに来たんだよ!屋上になんて居ないだろうなって思ったんだけど案の定居なかった!」
「また赤司かよ、何、お前らって離れたら死ぬの?」
「そんなことあるわけ無いじゃないですか!やっぱり灰崎くんってバカなんだね!」

ゲラゲラ笑うなまえの足を蹴ったら悶絶しながらうずくまった。大人しくなって良かった。
にしても、マジでこいつ赤司のことばっかりだよなぁ。恋愛というよりゃあ、家族として懐いてるって感じだ。つくづく赤司もカワイソウなこった。愛の違いを鼻で笑う。ああ、でもやっぱ他人のものって奪いたくなるんだよなぁ…。赤司のやつ、どんな顔すっかな。にやつく口元を隠しつつ、足を抱えるなまえの肩を押す。どさりとなまえが背中をコンクリートに打ったらしい。
「いぃっ、たい!」
ムードもクソもねーなこいつ。押し倒して馬乗りになる。が、なまえは気にする様子もなく打ち付けた背中の痛みに悶えていた。この野郎。

「なまえお前、どうせ男の経験とかねぇんだろ」
「男の経験?男になったことあるかって話ですか?」
「ンなこと聞くわけねーだろ!」

バカにも程がある。そもそも日本語が通じないやつを落とすなんて無謀ってやつか。…いや、これもあの赤司に惨めな思いをさせるためだ。ここで引き下がったら男じゃねぇ!
灰崎くんは女になったことあるのだとか聞いてくる声を無視してなまえの首筋に唇をよせた。これにはさすがのなまえも恥ずかしがっ、
「あっ!ちょっと灰崎くん!」
「んぶっ」

急になまえが上半身を起き上がらせる。それは、まあ、いい。けど、だ。何で起き上がる拍子に。俺の頭を支えにして起き上がるのかって、話だ。ぐっと力を加えられた俺の頭はコンクリートに衝突するなんてことは、分かるだろう。ぐわんぐわんする頭を抱えながら倒れる俺をよそに、なまえはちょろちょろと俺の下から退き、何かを持ってきた。
嬉しそうに手に持ったそれは俺のゲーム機だ。暇だったから屋上で遊んでいようかと思って、そばに置いておいたものなのだが。

「このゲーム機ね、ずっと気になってたんだよ!ねえねえやっていい?いいよね!ね!…あれ灰崎くんどうしたの」
「…て、てめー、ゆるさねぇ…」
「え?何聞こえない!」

そう言いながらもゲーム機を勝手に使っていくなまえに殴りたいとは思ったが憎らしいとは思わなかった。そんなことより呆れとか疲労感とかが先にくる。…もう、こいつは止そう。そう思うのも無理はない。こいつがそこらの女と同じ方法で落ちると思ったのが間違いだった。なまえはそもそも女じゃねぇし人間でもないような気もする。
…赤司って案外シュミわりーんだな。

「ああっ、ここどうやって行くの灰崎くん!進めない、人生最大の壁にぶち当たったかもしれない」
「バカ、上開いてんだろ」
「んんん見逃しやすいところだよね!」
「どこがだよ」

俺にさっき何をされそうになっただとか、ホントに分かってねぇのかなこいつ。なまえのことだからマジで分かっていなさそうである意味恐ろしい。だって、さっき押し倒して、馬乗りにもなってやったっつーのに普通に笑いながら声をかけてくる。何なんだよ、この脱力感は。
ああもう有り得ねぇ!この俺が他人の女一人奪えねぇとか、ああ、バカか。もう全員バカでいい。

「ねえこのゲーム貸して!」
「ハァー?やだねお前壊しそうだし」
「壊さない!壊さないから、ねえ、いいよね!」
「……勝手にしろよ」
「ありがとう!」

だからなんでそう笑うんだよ!
もう、俺、こいつ苦手だ!


「赤司、灰崎とみょうじが一緒に居るのを見たのだよ。珍しい組み合わせもあるものだな」
「ほう……あのハゲは調子に乗りすぎだな…」
「赤司!?」
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