「こんにちは黒子くん」
「………」

…あれ?黒子くんからのお返事がありません。
どうかしたんでしょうか。と、机に顔を伏せている黒子くんを覗き込みます。
ああ、寝ているみたいです。最近は部活がきついって火神くんも言っていましたから。
起こしてしまうのもなあ、と思いますが私としては黒子くんとお話をしたい気持ちでいっぱいです。
でも、この綺麗な寝顔を観察、というのも悪くはありませんね。
それにしてもどうしてこんなに睫毛が長いんでしょうか。お肌も綺麗ですし。
さすが私の天使様だと思います。

「…黒子くーん」

小さめの声をかけてみますが、まったく起きる気配はありません。
よっぽど疲れているんですね。
今日のところはちょっと残念ですけれど、寝かせておくことにしようと思います。
その代わり明日はもっとたくさんお話しますけどね!
あ、でももちろん私はここを離れる気はありませんよ。
十分に黒子くんの寝顔を堪能していくつもりです。はあ、可愛い。

それにしても本当に黒子くんの髪はさらさらですね。
傷んでもいないし、ちょっと癖はありそうですけど……、触ってみたいものです。
触ったら怒られるでしょうか。起きたあとに制裁を加えられるでしょうか。
ああ、でも黒子くんにお仕置きをされるのはなかなか…おっと変態路線にいってしまいました。
と、いうわけなのでちょっとだけ。すこしだけ、触ってみたいと思います。

そろりと指先を黒子くんの髪に触れてみました。あ、思ったより柔らかいです。
指に絡めるようにして髪を梳いてみるとするすると流れていってしまいます。
男の子のくせにとても良い髪を持っているようで羨ましいです。

「…んん」

あ。
起こしてしまったかと思いました。えーと、寝言?でしょうか。
すこしだけ唸ってから、また寝息を立てています。本当に可愛らしいです。
髪からゆっくり手を離して、次はお顔を見てみます。
うーん、見れば見るほど素敵です。こんなに可愛らしいお顔をしているのに、バスケではすごく熱くなるというギャップ。
それを間近に見れるバスケ部のみなさんが羨ましいと思います。

ときおり揺れる睫毛とか、形の良い唇とか、もうすべてを触ってみたいです。
まあ、そんなことをしたときには一生冷たい目で見られることになるんでしょうけれど。
ああ、でも。その柔らかそうな唇が、とても。

「…かわいい」

触れたら、起きてしまうでしょうか。
起こさない程度に、そう、ゆっくり慎重にやれば大丈夫ですよね。
私と黒子くんの間にある机に手をついて、そっとお顔に手を近づけてみます。
この緊張感といったら、そうですね、ぐらぐらになっているジェンガから際どい位置のブロックを抜くときのような。
震えそうになる手をちょこん、と黒子くんの唇に触れてみると。

「寝込みを襲うとは良い度胸ですね」

ふいに黒子くんの声が聞こえた気がします。
そう、理解したときにはもうその手をがっしりと掴まれていて。
…あっ、ジェンガが崩れた、と思うように私の頭の中は真っ白です。
反応できていない私をよそに、黒子くんはその手をぐっとすごい力で引っ張ります。
…え、黒子くんってこんなに力があったんですね。

その力に抗うことなくがたん、と机に身を乗り出す形となった私に黒子くんは薄い笑みを浮かべています。
これは、俗に言う死亡フラグ、というやつでしょうか。
満足なリアクションもできないまま、私はただ黒子くんのその綺麗で怪しい微笑みを見つめていました。
それはもう、見惚れる、というような。
そう、だから見惚れていた私は。ゆっくりと近くなっていく自分と黒子くんの距離に対応できないまま。

「……え?」

そっと重ねられたそれに驚くことしかできずに。
黒子くんが、まさか。私に。
疑うように黒子くんの瞳を見ると、それはそれは妖艶に。

「…何をされたんですか?」

そう言って私の手を離すものだから、思わずその手をもう一度掴み返してしまいました。

「…もう一度」

その言葉通り、再び重なったそれ。
もう夢なのか現実なのか分からないまま、ただその彼の手を離さないようにと必死で。
ああ、ええと。唇へのキスは、愛情で。
まさか、黒子くんが私に愛情を示すだなんて。

「今日は何の話ですか?」

「え、えと。黒子くんの、」

黒子くんの好きなものを全部、教えて。
そう言うと彼はその形の良い唇を動かします。

「いいですよ。その代わり、みょうじさんの好きなものも」
「明日は、」
「嫌いなものも、教えてください」

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