※ちょっと暴力が襲ってます

ヤツと目が合った瞬間、私の顔の横すれすれを何かが飛んでいった。ばっと振り返ってみると、飛んできたのは今さっきまでヤツが持っていた缶ジュースだと確認できた。やばい。全身が警告を告げて、すぐに走り出す。五メートルはあったヤツとの距離は、あっという間に一メートル以内になっていた。暫くしないうちに腕を掴まれて、コンクリートに身体を打ち付けられる。痛みに声をあげる暇もなく、逃げようと地面に手をついたがその甲を踏まれた。

「お前、今まで」

ヤツは若干息を切らしている。何処にいた、と恐らく言ったのだろうが残念ながら言葉は私の耳から通り抜けるだけで頭に入ってこない。踏まれている手をどうにか抜け出そうと試みる。質問に答えない私に、当然ヤツは苛立っていた。私の髪を引っ張ると、鋭い眼光を浴びせてくる。

「答えろ」

ヤツは、どうしようもなく恐ろしい人間だ。しかしここで降参するのは、ヤツに負けた気がして嫌だった。掠れる声で、忌々しいヤツの名を紡ぐ。一瞬力が緩んだのを見逃さない。ありったけの力でヤツを突き飛ばして、走る。建設現場を見つけ、誰かに助けを求めようと思うが人は一人としていなかった。もたもたしていると、ヤツとの距離が縮まっていく。まずい。咄嗟に、建設現場に積んである鉄パイプの山を崩した。耳をつんざくような音が響く。これで、人が来てくれれば助かる。私の行動を見てヤツは目を丸くさせたが、すぐに憎悪をはらんだ目に変えると私を蹴り倒した。

「そんなことで、僕がやめるとでも?」

腹の上にヤツが乗る。ふ、と肺から息が漏れた。苦しい。荒い息を繰り返していると、開いた口から舌が侵入してくる。熱いそれは私の口内も呼吸もかき回し、捕食されているようだ。酸素不足で意識が朦朧とする。ぬるりと絡めてくる舌を噛もうかと考えたが、どうにも力が入らない。いよいよ気を失うと思ったところで、唇が離された。肩で思い切り酸素を吸い込みむせる。今度は首筋に這うヤツの舌を拒絶する気にもなれなかった。ヤツは何度か首に吸い付き、赤を残したかと思えば突然歯を立てる。痛い。

「逃げようとすれば足を折る。抵抗すれば腕を折る。喚くなら首を絞める」

一息に紡ぎ終えた後、答えろ、と言う。ヤツの表情は怒りに満ちていて、それから焦りや悲哀、奥には激しい愛情が見えていた。

「なぜ消えた。何処にいた。誰といた」

観念して、獣のような瞳で問いただすヤツの手を握る。私の予想外の行動に、ヤツは驚いていた。それもそのはずだ。思わずため息を零す。

「トイレ行ってたんだけど」

2分くらいしか離れてないはずだ。赤司は、渋々私の上から退いた。

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