羊のいのち


「ドクターさん、こんにちは
今日も来てくれてありがとうございます」

「いえ、体調は如何ですか?」

いつも通りです、と彼女は応える。

「昨晩、倒れられたと聞きましたが」

「ちょっと、風に当たりたくなって」

「…駄目ですよ」

「ごめんなさい、」

「私は、貴女の事が心配なんです」

「分かってます」

「もうすぐ、
もうすぐ、貴女を治しますから」

「わたしの病気、治せるんですか?」

「ええ、きっと」

「…」

「名前さん、
もしここを出られたら一番に何がしたいですか?」

「出られたら?」

「はい」

「わたしは、」

「はい、」

「あなたとどこかへ行きたいです」

「…」

「ダメですか?」

「いいえ、」

行きましょう、貴女の望む所へ

ありがとうございます、と彼女は小さく笑う。

生きることを諦めている彼女を助けたい。

自分の命のことしか興味がなかった俺に、そんな心が芽生えたのはいつからだろう。

「ドクターさんと一緒にいられるって思ったら治る気がしてきました」

「…それはそれは」

「あ、ごめんなさい
もう面会時間が」

「…そうですね
では、また来ます
次も、元気な顔を私に見せてくださいね」

もうすぐ、俺の願いは叶うだろう。

長年の、願い。

俺が不老不死になれば何億人もの人間を救うことが出来る。

彼女を自由に出来る。

それは何兆匹の下等生物を犠牲にしてでも行わなければならない事だ。

「おい助手、明日は例の旅館へ行く日だ。俺の足を引っ張らないよう、しっかり頼むぞ」

「ええ、勿論です
"無敗の刑事"の名に相応しい結果にして見せましょう」

この無能の刑事とも数日でお別れだ。

馬鹿な奴だ、おそらく最期まで自分が有能だと信じているのだろう。

…俺にはどうでもいい事だが。

他の下等生物には華々しく散ってもらおう。

俺と彼女の未来のために。







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ヘビになっちゃったblackdoctorと名前ちゃんの話も書きたい。



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