人類の文明なんていりません!
名前と遊園地に来て小一時間。
伊藤開司は窮地に立たされていた…!!
ま…
「迷った…」
周囲に名前の姿はない。
「くそっ…名前の言う通りじっとしてれば良かった…っ」
名前は土産を買ってくるからそこから動かないでね!と言い、店の中に入っていったのだ。
しかし、遊園地など縁もゆかりも無かったカイジははしゃぎまくり、名前の言いつけも聞かず歩き回ってしまったのであった。
「(遊園地なんてくるの下手したら小学生ぶりだし…はしゃいで何が悪い…っ)」
普通の人間なら、携帯を使い相手と連絡をとれば解決だろう。だが、文無しのカイジは携帯電話を持っていなかったのだ…
「だ、大体…土産もん屋ありすぎだろ…!!」
唯一持っていた園内地図を見てみると広い園内に5つもの店があることが分かった。
「(名前が入っていったのだ店は確か大きかったから、この5つの中のどれかで間違いないはず…)」
しかし、肝心のどの店かは思い出せない。
最も思い出せたとしても…名前がカイジが居なくなったことに気付き、探し回っている可能性が高い。今急いで戻ったところで入れ違いになってしまうのだ。
最悪の状況…!
「(けど、じっとしていても仕方ねえよな…)」
まず、ここから1番近い店に行こう。
あいつより足は早いし、それで追いつけることに賭けるしかない…
そう、カイジが踏み出そうとしたまさにその時…!
『本日はネズミーランドへご来園頂き、誠にありがとうございます。
園内のお客様に迷子のご案内をいたします。
緑のチェック柄の服を着た伊藤開司くん、伊藤開司くん〜お姉様が探しておられます。心当たりの方は当園案内所までご連絡下さい。繰り返します、…』
!?!!?!
周りにいた人たちが一斉にカイジを見た…気がする…
「(名前の野郎…っよりによって迷子センターに連絡してんじゃねぇ…っ)」
地図を見て、案内所の場所を確かめたカイジは走り出す…
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「…あっカイジ〜!やっと見つけた〜!」
「ば、ばばばバカッ!大声で呼ぶんじゃ、」
「よかったですね、来られましたか。…えっ」
案内所の人間が驚くのも無理はない…
てっきり5、6歳の子供が来ると思っていた矢先、20歳を超えた青年が来たのだから…
「はい!ご迷惑をおかけしてすみません
ほら行こカイジ!」
「う、うぅ…」
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「良かったーほんとに。カイジ携帯持ってないから…ていうか店の前で待っててって言ったじゃん!」
「そ、それは悪かったけど、でも何も迷子センターに連絡することないだろ!?俺はもう十分大人なんだし…」
「だって他にどうやって呼び出せって言うの?」
「俺はさっきお前のいた店まで戻るつもりだったんだ…!それをお前が余計なことするから恥かいただろうが…ッ」
…まぁ名前のいた店は結局思い出せなかったが…
ちら、と名前を見ると
あ、
名前の目がうるうるとしてきている。
まずい、言いすぎたか?
「ご、ごごごごめん、でも俺は、」
「だって…だって、カイジがまた居なくなっちゃったかと思ったから…っ」
「な、泣くなよ…ごめん…俺が言いすぎた…」
「ごめん…嫌な思いさせたよね?でも…カイジがまた変な黒服の人に連れ去られてるかもって思ったら…わたし…」
黒服が俺を狙ってるとしたら、余計に名前を放送するのはマズイだろ…と思ったが、
「ごめんな、名前…俺はお前に黙って居なくなったりしねえから…。それに俺が黒服に狙われる理由は無いんだ。…勝手にウロチョロしたことも謝る。だから、泣かないで俺と遊園地回ろうぜ。…な?」
名前は頷いて、俺の手をぎゅ、と握りしめてきた。
「さっきはさ、土産とか選ぶの面倒だと思ってお前を1人にしたけど、今度は俺も一緒に見てもいいか?」
「い、いいの!?」
うーん、俺の彼女は今日も可愛い。
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オチはないです。