きみを好きになるのは大変だ! | ナノ

同じクラスのお金持ち

名前は、母親からのお使いで街へ買い物へ来ていた。

目的のものを手に入れ、帰り道を歩いていると高校のクラスメイトが目に入った。

すぐ後ろには黒光りの高級車。

彼は煙草を吸いながら、周りにいる綺麗な女の人と騒いでいる。

…そして何事も無いようにそれを路上に捨てた。

「兵藤くん、ポイ捨てはしちゃダメだよ」

名前は思わず近付き、彼の吸殻を拾い上げる。

高校生なのに煙草吸ってるの?と言おうとしたとき、頭上から冷たい声が飛んできた。

「…は?いきなり何?ていうか誰?」

「兵藤くんと同じクラスの名字だよ。
…知らない?」

「…知らねー…アンタみたいな存在感薄いやつ、オレがいちいち覚えてるわけなくね?」

酷い言われようだなあ、と思いながら名前は吸殻を手渡す。

「はい」

「…は?何コレ」

「兵藤くんが捨てた吸殻だよ。すぐ横に喫煙所あるんだからそこで捨てたらどうかな?」

「なんでオレがそんなことしないといけないわけ?」

「…でも落としたの兵藤くんだし」

「オレに返してもまた捨てるだけだぜ、拾ったアンタが責任もって捨ててきなよ」

「…分かったよ」

…なんて自分勝手な。
でもこの様子だと本当にまた捨てるだろうし…

名前は渋々近くの喫煙所に入ろうとする。

しかし、周りにいた女性たちが騒ぎ始めた。

「えー!なにこのコ、超ウケる
和也に命令とか何様のつもりなの?」

「気安く和也に話しかけないでくれない?いま話してるところなの、見て分かるでしょ?」

学校から着替えてそのまま出かけた名前に比べて、彼女たちは派手な化粧をしており、女でもドキドキしてしまうような露出の多い服を着ている。

そして高いヒールをはいており、名前は見下ろされるような形になる。

「…す、すみません」

威圧感に負け、謝ってしまった。
…うう、このお姉さんたち綺麗だから余計怖いよ

「だいたい何そのカッコ
よくそんなんで外出れるよねー。アタシなら無理だわ」

きゃははっと甲高い声で名前を馬鹿にし始める。

名前はいたたまれなくなり、もうこのまま吸殻持って帰って捨ててしまおうかな、と思った時だった。

「あー…いや、そうそう。アンタに用があるんだった。いや〜忘れてたわ、うんうん」

「え?」
「は?」

名前と彼女たちの声が重なる。

和也は名前の肩を抱き、車の中にいた黒服に呼びかける。

「いや、マジマジ。超重要な用事。てことでお前らもう帰れ」

「は、ちょ、何言ってんの和也?」
「嘘でしょ?これからアタシたちと遊んでくれるんじゃ、」

和也は完全に無視し、彼女たちを車に押し込めた。

「じゃ、黒服、後は頼んだぜ」

「「ちょ、ちょっと待ってよ和也〜!」」

彼女たちの声はどんどん遠くなって消えていった。

名前は状況が理解出来ず、その場に立ち尽くす。

「あいつらマジ声高すぎ…頭いてえ…
あー悪かったな。えっと…名字、だっけ?
さっきのあんま気にすんなよ。
アンタがあまりにもオレと釣り合わなすぎたから悪く言っちまったんだろ、カカッ」

「兵藤くん、用事って何だっけ?」

和也の嫌味にも全く気付かず、名前は疑問を投げかける。

「は?んなもんしてねーよ、アンタを助けてやったんだろうが。
まーオレも今日はなんとなく遊ぶ気分じゃなかったし良かったけどな」

そっか、といい名前は歩き出す。

「ちょ、どこに行くんだ?」

「コレ捨ててくるよ」

名前が喫煙所に入ろうと扉に手をかけると、和也がそれを防いだ。

「どうしたの?」

「…やっぱりオレが捨ててくる」

意外な申し出に名前は目を点にする。

「ええっなんで?」

「…アンタ煙草とか吸ったことないだろ。中、だいぶ匂いキツいぜ」

「それはそうだけど…」



<<│>>


目次
fkmt作品

Back to Top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -