何度も言うけど、俺も限界なわけで。
ただ、本当に分かっているのかいないかの確認をしたのはそれを正当化するためだったわけで。つぐみがケツにどうこうとか、そもそも男同士が無生産な関係だってことも、考えていないないことは察しがついていた。
だからそれを容認している俺が一番の問題だってことは、よく分かってるんだって。
小さいはずの
「あー、その顔はついにって感じ?」
汚点だ。
何ちんこ擦り合わせて喜んでんだよ。いや気持ち良かったけど。相当。でもあそこまでするつもりはなかった。本当に。ただ、何となく寂しそうな顔をしていたからうちに連れていったわけで。それなのにつぐみが電話する俺の横で急に発情して、俺も我慢する理由はもうないわけで、だからあんなことに。
「櫂ちゃんのビッグマグナムがスプラッシュしちゃったんだね」
一応確認はした。でもわんわん泣き出すし、でも一回その気持ち良さを知ったらやっぱり男前に求めてくるし。まあ、俺も悪かった。ユリは夜勤で、有はクラブの練習で、家に居ないと分かっていて連れ込んだようなものだ。ちなみにこのど変態馬鹿が家に居ないことも、知っていた。
「糸井のどんなのだった?やっぱりぴんく?つるつる?あー、まあそりゃそうだよね、細いし色白だし」
それでああいうことになるのはまあ自然な流れと言える。と、言いたいことはいろいろあるけど、そういう終わったことをうだうだ考えることほどだるいことはないわけで。
目の前で相変わらずの変態っぷりを発揮する幼なじみを眺めながら、すぱっと考えるのをやめた。
「で、アナルセ─」
「滅びろ」
「ひどーい。僕は心配してるだけなんだからね。ほら、避妊はちゃんとしなきゃだめだよ?性別の問題じゃなくて、エチケットだからね。それにお互いの体の為にも。で、糸井は無事なの?」
「は?」
「だって櫂ちゃんのビッグマグナム突っ込まれたんでしょ?絶対無事じゃないでしょ、痛いに決まってるって。僕考えただけで痔になりそう」
「俺の意思を尊重しろ」
地球がひっくり返ってもお前とセックスすることはない。そう言いたかったけど、余計なことは言わないに限る。
「僕が家に居ないって知ってて連れ込んだんでしょ?もーやだーやらしー。言ってくれれば見に行ったのに。あ、野々宮から伝言。彼女紹介しろ。だって」
「なんで野々宮」
このど変態馬鹿は、昨日祖父母の家に行っていたはずだ。いちいちうちの母親にまで報告していくから知っているだけなのだけど。それに嘘があったことはなく、まあ俺も疑いはしない。だから居ないと断定したわけで。
「櫂ちゃんがおっ始めて電話でないからだって」
野々宮は俺となりをなんだと思っているのか。そういえば連絡がくるのが鬱陶しくて、携帯はサイレントにしたまま開いていない。
「言っとくけど、僕彼女なんて知らないって言ったからね、ちゃんと。だって実際彼“女”じゃないし。僕嘘は付かない主義だからね。男?って聞かれたら肯定しちゃうだろうけどさ」
「なんでもいいけど、そのほっぺ何したわけ」
「あ、これ?昨日の放課後関谷が生徒会室来てくれて、堪んなくなって抱きついたら思いっきり引っ掻かれた」
「……」
「容赦ないよね。そんなとこも好きだけど」
左の頬に綺麗についた四本の線を撫でながら、眼鏡を曇らせる様は、もう通報したくなるくらい変態だった。
「で、どうだったの?櫂ちゃんのマウンテンがスプラッシュ…」
「そのアトラクションみたいな言い方やめろ」
「やだ、櫂ちゃんったら、アトラクションだなんて。櫂ちゃん自身がアトラク─」
「あ、関谷」
「嘘だね、僕の関谷センサーが反応してない」
「お前この先どうなるつもりなの」
というか、真面目な生徒会長がこんな奴だってことを、どうして教師は気づかないんだろうか。不思議でならない。こんなに本性を露にしているのに、どうしてここまで頼りにされているのか。世も末だ、本当に。
「あ、噂をすれば」
「……」
「糸井のジャージ姿。あれ、でも関谷いないね」
「いてもわかんねえよ」
特別目立つわけでもない関谷の顔は、今でも俺の中ではっきり思い浮かべることは出来ない。
「暴言。櫂ちゃん、ばちあたるよ!まあ、僕だけが見てればいいんだけど」
「なんか腹痛いからトイレ行ってくるわ」
「大丈夫?もしかして櫂ちゃんが乗られて中に出されたの?ダメだよ、ちゃんと後処理はしなきゃ。それに、生は本当にダメだよ」
「その真剣な顔やめろ」
窓の外を眺めていたなりを置いて教室を出ると、あと数分で始まる授業に合わせてこちらに向かってくる教師が見えた。その視界に自分も入っているんだろうなと考えながらトイレに入った。
「っ、は」
「うわっ、高梨櫂!…先輩」
入った瞬間、出てこようとしていた小柄な体が突進してきた。俺のことをフルネームで呼び捨てにするのは、俺の記憶の中でただ一人。なりの標的にされている関谷だけだ。
「なんか腹たつな」
「……」
「何」
「、いや、なんでも…」
学年ごとに階が違い、階ごとにトイレはある。にもかかわらず、わざわざ階の違うトイレに来るって何事だよすげーなと、内心思いつつも声には出さなかった。何より面倒だし、あんまり引きとめてなりがきたら可哀想だと思ったからだ。
「そ」
「あっ、あの」
「……何?」
「いや、ちょっと聞きたいことが、ある…んですけど」
「それでここに居たわけ」
「本当は教室まで行くつもりで…でも、あんた、馬鹿なりとずっと一緒だし、声…かけられなくて」
なりはこの男のどこがそんなに好きなんだろうか。良いところと言われても俺にはわからない。まあ悪いところが見えないのも事実だが。
その時背後で始業のチャイムが鳴った。つぐみとおなじクラスなんだから、関谷も体育だろうに。まだ着替えてもいないところを見ると、休み時間の間ずっと様子を伺っていたんじゃないかと、心配になった。
「糸井のこと」
「なりのことじゃなくて?」
「なっ、ば、馬鹿なりなんかのことじゃない」
「分かった分かった。で、なに」
「……何か、した?」
「は?」
「なんか、今日やたらぼーっとしてるっていうか」
「本人に聞けよ」
「なにも言わないからだろ」
「……もしかしてお前」
「な、なんだよ」
「それを口実にここまできて、なりに会いたかったのか」
「ちっが!そんなわけ」
友達思いなのも良いが、これはもしかしてつぐみに淡い恋心でも抱いているんだろうかと過った。けど、ないな。この反応は絶対ない。なりのことを必死に否定しつつ、気になっているタイプだ。
どちらにせよ、俺に直接の関係はないけれど。
「分かったから。さっさと戻れ」
「……」
「教室の前通れば、嫌でもあの馬鹿出てくると思うけど」
「…糸井と、その…付き合ってんの?」
「だったら」
「別に。ただ糸井、言わないから…どうなんかと…」
「それさ、お前が俺のこと嫌いだからあいつも喋りづらいんじゃねえの」
あー、なるほど、というように軽く頷いた関谷は、やっぱりつぐみのことを友達以上には思っていないだろう。
「なりのことで相談なら聞いてやるから、今はさっさと戻れ」
「、……はい」
まさかあの変態大魔人の手に落ちるとは。
いやでも今俺が一番気にしてるのは、連続三回もいって、元気なつぐみが信じられないということで。だってあのあと有と親父が帰って来て四人で飯を食って相変わらず有と戯れていたし。送っていったときも、まだ欲情したような濡れた目をしていた。
俺だって枯れてはいないはずなのに…
怖い。若い子の性欲。
「一つの年の差」
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