入試が終わって気が抜けたのと、遥の誕生日に直接お祝いが出来て嬉しかったんだと思う。

普段なら会わない時間に現れた僕を、快く迎えてくれた遥は少し話をしたあと僕を抱き締めて布団に押し倒した。指を絡めながら何度も何度もキスをして、僕もそれに答えたくて重なる唇から遠慮がちに出される遥の舌先を軽く噛んだ。

「り、」

「はるか」

「うー、そんなえっちな声出さないで」

「ご、ごめん、なんだか、こんなにキスするの、久しぶりな気がして…ドキドキする」

「俺もしてるよ」

握りあった手を誘導されて遥の胸に押し付けられた。ドキドキと、自分の中で聞こえるのと同じくらい早い鼓動にまたドキドキして、ここに来るまでも緊張していたことを思い出す。会いたいと思えば会える距離にいるのに、会えることがこんなにも嬉しい。毎日顔を合わせているのに。卒業して、それがなくなったらこの嬉しさを上回るのだろうか、会えない分、寂しくても。

「りん」

「ん、うん、」

顔の横で繋いだ手を縫い付けられ、遥のもう片方の手が僕の頬から首を撫で、ゆっくり胸を擦った。もうそれだけで、体が遥に触れられることを望んでいるのが分かる。
浅ましい体になってしまったとショックを受けながら、それでも遥も同じ事を感じてくれていたらそれは嬉しい、そんな矛盾を払拭するように、温度の高い手がセーターの中へ入ってきた。

「ぁ…はる、か…」

「りんちゃんの肌、気持ちいいね」

「へ、」

「ぴたってする…でもすべすべだし、温かい。俺しか知らないと良いのに…」

「遥しか、知らないよ」

自分で自分のお腹を撫でたってちっともそんなこと思わない。遥以外にそんなところを触った人は居ないから分からないけど、別に普通のお腹だ。
じっと僕を見下ろして、とろけたように目を細める遥にその顔に弱いからやめて、と言いたくなった。本当に、すごくすごく可愛いのだ。それにまたドキドキして、お腹を這う手に自分の手を重ねた。

「はぁー…きもちい…」

「遥、くすぐった…ん、」

「りんちゃん、ごめん、」

「う、え?」

「勃、っちゃった」

「っ、は、る…」

やんわりと当たっていたのは気付いていた。僕も反応しそうなそこに無理矢理理性を押し付けていたけれど、遥が言葉にした途端空しくも元気になってしまった。

「し、しないよ!」

「…そう、だよね…」

「りんちゃん疲れてるだろうし、明日学校だし…今日はゆっくり休まなきゃダメだもん」

「うん…でも」

ゴリ、と無意識に押し付けられる腰にお互い後には引けないな、と頭のどこかで冷静に考えていた。それでも遥はぶんぶん頭を振って「無理させたくない」と情けなく言った。それなら、と触るだけにしようと提案すると遥はもう一度キスをしてから僕のズボンに手をかけた。
それからゆっくり下着も下げられ、遥のスエットも足の付け根まで下げられた。見るのも恥ずかしいくらい反り勃った遥のものがゆっくりゆっくり僕に押し付けられる。

「っ、ん…う」

「はぁ、」

ぬるりと、先走りで擦れたそこは遥の手が両方握り込んでゆるやかに扱かれた。お互いの体温を分け合う、肌と肌を重ねてその存在を確かめる、胸が満たされるのを感じて、恥ずかしさを越えてまた好きになる。

「んっ、ん…ぁ」

「りん、ちゃん、」

「っあ…ん、はるか」

「きもちーね」

「ん、」

「痛くない?」

「う、ん…きも、ち…」

「うー…どうしよう、もう、イきそ」

ぎゅっ、と扱く手に少し力が入るのが分かった。でも、それはすぐに緩められ「りんちゃんは?」と震える声に問われた。ぬるぬると、遥の腰が揺れる度えっちな感触と音がする。
下唇を噛んで頷くと、すぐにキスを落とされた。遥の唇が僕を食んで、噛まないでと言うように隙間に舌を忍ばせて。そこに意識が向き、気を抜いた瞬間に遥の手が強く二人のものを扱きあげた。

「っ、あっ」

「ん、」

「ぅっ、あ、んん、遥、イ、く…」

「うん、俺も、ん…」

う、と繋いだ手に力がこもる。
遥に食い込んだ自分の指先が震えている。僕に覆い被さる遥は長い睫毛を伏せて甘い声を漏らし、僕のお腹に二人分の白い液体が垂れるのを見ていた。

「はるか…」

「、うん?」

「キス、したい」

「へ、へへ、うん、する」

射精後の妙に冴えた頭では、僕ってなかなか大胆なこと言えるんだなと、場違いなことを思った。それでも、嬉しそうにキスを降らせてくれる遥に、そんな考えも、今日までの不安や緊張も、柔らかく溶かされていくようでひどく心地好かった。

「誕生日おめでとう」

「ん、ありがとう…へへ、嬉しい」

「僕も、嬉しい」

「えー?」

「嬉しいよ、遥が…」

産まれてきてくれて、僕と出会ってくれて。大事な人が出来るって、そうか、こんなにも愛しい事なんだ。噛み砕いて、丁寧に、遥に伝えていきたい。僕が好きな遥を、遥自身にも好きなって欲しいから。

「産まれてきてくれて」

目を潤ませてありがとうと、小さな声でもう一度溢れた言葉にキスをして、僕も笑った。



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